国債利回りの上昇、新たなリスク要因に=今週の米株式市場

[ニューヨーク 19日 ロイター] - 米株式市場はこれまでのところ、米国債利回りの急上昇を消化しているが、一部の投資家の間では、今後も利回りの上昇が続けば大きな問題になるとの懸念が浮上している。
米10年債利回りは、19日までの週に1年ぶりの高水準となる1.36%まで上昇。背景には新型コロナウイルスのワクチン接種や追加経済対策で景気の回復が一段と進むとの見方がある。
S&P総合500種指数は昨年3月以降、約75%値上がりしている。
USバンク・ウェルス・マネジメントのエリック・フリードマン最高投資責任者(CIO)は「国債利回りが上昇すれば、すべての資産価格が下落するはずだ。理論的にはそうなる」とした上で、現時点では債券が株と競合する魅力的な資産となるほど、利回りは上昇していないと述べた。
リフィニティブのデータによると、企業の第4・四半期は予想を17.2%上回っている。22日から始まる週の株式市場では、引き続き企業決算、経済指標、追加景気対策の行方に注目が集まるとみられている。
企業決算は好調だが、不安要素は少なくない。ビットコインやテスラ株の急騰、相次ぐ特別買収目的会社(SPAC)の上場。超金融緩和と積極財政を背景にリスク選好度が著しく高まっており、国債利回りの上昇が本格化すれば、リスク選好度が低下する恐れがある。
BofAグローバル・リサーチの最新のファンドマネジャー調査によると、通常以上のリスクを取っている投資家の比率は差し引きで記録的な高水準に達しており、投資ポートフォリオに占めるキャッシュの比率は2013年3月以降で最低。株式と商品への配分比率は約10年ぶりの高水準となっている。
シティのストラテジストはリポートで、10%の下落は「十分あり得るとみられる」と指摘。「国債利回りの上昇で一部の大型ITグロース株が売られれば、市場全体の値動きを示す指数に影響が出る。そうした銘柄のウエートが過度に高いためだ」と述べた。
ノムラのアナリストも、10年債利回りが1.5%を超えれば、株価が8%値下がりする可能性があると分析している。
一部の投資家は債券に比べて株式が依然として割安だと指摘しているが、リフィニティブ・データストリームによると、S&P総合500種指数採用銘柄の株価予想収益率(予想PER)は22.2倍と、長期平均の15.3倍を大幅に上回っている。
ただ、国債利回りの上昇は景気回復期待を背景とするものだとして、楽観する見方も少なくない。
コザド・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、J・ブライアント・エバンズ氏は、経済見通しの改善と金利上昇を受けて、銀行株と住宅ローン会社の株式を高配当ポートフォリオに追加した。
同氏は、10年債利回りが3%になれば、株式投資よりも債券投資の魅力が増し始めるのではないかと指摘。
「金利は歴史的に見て、まだ極めて低いと思える。顧客には、バランスを取り、債券投資にシフトするまでもう少し待つべきだと勧める」と述べた。
キングスビュー・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ポール・ノルテ氏は、国債利回りの上昇で米連邦準備理事会(FRB)の「トーンが変わるか」に注目していると発言。FRBが債券買い入れの縮小を示唆すれば、市場が動揺する可能性があるとの見方を示した。
ただ同氏は現時点では、国債利回りの上昇を理由に株式投資を減らすことは見送っており、今後も景気の拡大で株価が上昇すると予想している。特に景気回復で恩恵を受ける金融株などのバリュー株が値上がりする見通しという。
同氏はイールドカーブのスティープ化について「景気が回復し、健全化していることを誰にも伝える債券市場独特の表現だ」と述べた。

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