コラム:バイデン氏のワクチン接種計画、実態はもっと進展か

コラム:バイデン氏のワクチン接種計画、実態はもっと進展か
 3月12日、バイデン米大統領はこのほど、5月1日までに全成人を新型コロナウイルスワクチンの接種対象とし、7月4日の独立記念日までには社会が正常化に近づくよう道筋を付ける意向を示した。写真は1月、デラウェア州ニューアークで新型コロナワクチンの予防接種を受けるバイデン大統領(2021年 ロイター/Tom Brenner)
Robert Cyran
[ニューヨーク 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - バイデン米大統領はこのほど、5月1日までに全成人を新型コロナウイルスワクチンの接種対象とし、7月4日の独立記念日までには社会が正常化に近づくよう道筋を付ける意向を示した。だがこの見通しは、控えめ過ぎるかもしれない。
ワクチンの生産スピードとリアルタイムのデータを見ると、状況はもっと急速に進んでいる。米疾病対策センター(CDC)によると、少なくとも1回接種を終えた人の割合は米国民全体の19%超、65歳以上では62%超に達している。接種と感染者数減少は、相乗効果となって経済に浸透し始めており、消費者の恐怖心で痛撃を被っていた分野の活動をよみがえらせている。
空の旅を例に取ろう。米運輸保安庁は空港の保安検査場を通過する乗客の数を追跡している。昨年4月の人数は2019年の同じ日の5%に満たなかったが、今月10日時点では約45%まで回復した。1カ月前に比べて10%ポイントの上昇だ。
レストランの混み具合も、似たような回復ぶりを物語っている。飲食店のオンライン予約を手掛けるオープンテーブルのデータによると、店内利用のディナー件数は今月9日時点で19年の同じ日を46%下回っていたが、1カ月前はこれが59%だった。カーナビ大手トムトムの交通情報を見ると、ここ数週間でニューヨークからロサンゼルスに至るまで、幅広い米国の都市で道路の渋滞度合いが増している。
次に、米製薬ファイザー、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の推計に基づきBreakingviewsが計算したところ、6月末までに3社合計で、米国民全員が接種を受けられるだけのワクチンが追加供給される見通しだ。つまりバイデン大統領は「高過ぎない」目標を設定しているのかもしれない。昨年4月までに米国社会が正常化すると予想していた前任者とは大違いだ。
債券投資家は経済活動の活発化をキャッチし、10年物米国債利回りはインフレ圧力の高まりを織り込んで52週間ぶりの水準に上昇した。しかし同じウォール街でも、一部のアナリストはバイデン氏同様に状況の改善を過小評価しているかもしれない。
航空機利用と旅行は待機需要が見込まれるにもかかわらず、リフィニティブのアナリスト予想では、デルタ航空、サウスウエスト航空、格安航空会社(LCC)ジェットブルー・エアウェイズの売上高が19年水準に戻るのは22年後半、クルーズ船運営のカーニバルとホテル運営のヒルトン・ワールドワイドは23年となっている。これらの企業には、うれしいサプライズが待っているかもしれない。
●背景となるニュース
*バイデン大統領は11日、5月1日までに全成人をワクチン接種対象とするよう各州に指示すると約束した。
*米疾病対策センター(CDC)によると、3月12日朝までに少なくとも1回接種を受けた人の割合は米国民全体の19%超、65歳以上では62%超に達した。報告に遅れがあるため、このデータは実態を過小評価している可能性もある。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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