〔コロナ後の日本〕感染症頻発の裏に環境破壊、終息まで1年以上=山本・長崎大教授 

〔コロナ後の日本〕感染症頻発の裏に環境破壊、終息まで1年以上=山本・長崎大教授 
文明社会と感染症の関わり合いの歴史を研究テーマの1つとする長崎大熱帯医学研究所の山本太郎教授は、ロイターとのインタビューで、新型コロナウイルスなど新しい感染症が頻発するようになったのは、人類による生態系の破壊が影響していると語った。写真はアマゾンの森林を切り倒して作られた金の違法な採掘現場。2014年1月、ペルーのマドレデディオスで撮影(2020年 ロイター)
[東京 4日 ロイター] - 文明社会と感染症の関わり合いの歴史を研究テーマの1つとする長崎大熱帯医学研究所の山本太郎教授は、ロイターとのインタビューで、新型コロナウイルスなど新しい感染症が頻発するようになったのは、人類による生態系の破壊が影響していると語った。 
新型コロナが終息するには人口の7割が免疫を獲得する必要があり、最低でも1年以上かかると予測。コロナ後の世界は成長一辺倒の市場主義を転換し、持続可能な社会を築く必要があると述べた。 
    <新型ウイルス頻発には環境破壊が影響> 
    山本教授によると、新型コロナのような新しいウイルスは、野生動物からヒトへと感染する形で一定頻度で発生してきた。ところが近年、エボラ出血熱や新型コロナなど、その頻度が高まっているという。少し時間をさかのぼるが、エイズもその1つだとした。  
山本教授はその理由として、「人間による環境破壊で生態系が混乱を起こしている影響だ」と指摘。「開発や地球温暖化によって野生動物とヒトの暮らす空間が近づき、ウイルスがヒトに伝播しやすくなった」と述べた。     
    中でも今回の新型コロナがこれまでのウイルスと異なるのは、その感染スピードだという。山本教授は「端的に言えばグローバル化の影響。物流も含めたヒトの移動が爆発的に増加し、感染を大きくした」と語った。世界的に都市化が進んで人口が特定地域に密集し、飛行機の利便性が高まったことで都市間の移動が増えたと述べた。 
   山本教授は「これまでのパンデミック(感染症の世界的流行)は一つの場所から別の場所へ移動を繰り返しながら、地球を回り、人々が集団免疫を獲得することで終息に向かうパターンが多かった」と説明。「今回は同時多発的に世界で感染が広がっており異例だ」と語った。 
<感染スピード遅らせることの意味> 
    山本教授は新型コロナの終息見通しについて、「人口の7割程度が感染あるいはワクチンの接種によって免疫を獲得する必要がある」と指摘。1918-20年に流行し、2000万から4000万人の死者を出したとされるスペイン風邪のように、第2、第3の波が来る可能性があると懸念を示した。その上で、「なるべく多くの人口が免疫を獲得していれば、第2波の影響を小さくできる」と語った。 
    集団免疫の獲得には、自宅待機などで人と人の接触を減らし、感染スピードを遅くするやり方が望ましいという。時間はかかるものの、「医療崩壊を防ぐことができ、ワクチン開発の時間を稼ぐことができる」と述べた。「感染スピードが遅ければ、毒性の強いウイルスの行き場がなくなり淘汰される」とも語った。 
    7割が免疫を得るまでには「スペイン風邪などの経験から、直感的に最低1年、長くて2ー3年必要」との見方を示した。 
      
   <同じ世界には戻れず> 
    山本教授はコロナが終息した後について、「同じ世界には戻れない」と強調した。新たなウイルスの発生頻度を減らさないと人類が対応しきれなくなるとして、地球環境に配慮した持続可能な経済活動が必要との考えを示した。 
「市場主義に基づいた経済開発を進めて熱帯雨林を破壊、その結果としての地球温暖化などが、ウイルスを人に呼び込む原因になった。自然を使い尽くす開発からの転換、持続可能な開発目標(SDGs)を考えて発展をする必要がある」と語った。 
 (インタビュアー:竹本能文、編集:久保信博) 
    *インタビューは4月20日、電話で行いました。 

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