日銀、消費鈍化で景気判断引き下げ ウクライナ情勢に警戒

日銀、金融政策の現状維持を決定
日銀は17─18日に開いた金融政策決定会合で、現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和政策の継続を賛成多数で決定した。写真は日銀本店。2020年5月、東京で撮影(2022年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 18日 ロイター] - 日銀は17─18日に開いた金融政策決定会合で、現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和政策の継続を賛成多数で決定した。個人消費の鈍化で景気の現状判断を引き下げ、原油高騰で物価見通しを強めの表現に変更したが、景気回復シナリオは維持した。ウクライナ情勢が「日本の経済・物価に及ぼす影響はきわめて不確実性が高い」とし、新型コロナウイルス感染症の動向とともに注意が必要だとした。
<「前向きの循環メカニズム」、文言落ちる>
景気の現状判断は「感染症の影響などから一部に弱めの動きも見られるが、基調としては持ち直している」とし、前回1月展望リポートの「持ち直しが明確化している」との表現から後退した。
海外経済について「国・地域ごとばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復している」との文言は維持したが、ロシアのウクライナ侵攻で市場で不安定な動きが見られるほか、資源価格が大幅に上昇しており、今後の動向に注意が必要だとした。
輸出・生産は「供給制約の影響を残しつつも、基調としては増加を続けている」として、前回から文言を変えなかった。一方、個人消費は「感染症の再拡大によるサービス消費を中心とした下押し圧力の強まりから、持ち直しが一服している」と、前回の「持ち直しが明確化している」からトーンを落とした。
消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比は当面、エネルギー価格の大幅上昇や価格転嫁の進展、携帯料金値下げの影響剥落で「プラス幅をはっきり拡大する」とし、前回の「プラス幅を拡大していく」から強い表現になった。マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどで「基調的な物価上昇圧力は高まっていく」とした。
日銀は国内経済の先行きについて「感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、資源価格上昇の影響を受けつつも回復していく」と指摘、景気の回復シナリオを維持した。
しかし、1月展望リポートで記載のあった「所得から支出への前向きの循環メカニズムが家計部門を含め経済全体で強まるなかで、経済は潜在成長率を上回る成長を続ける」との1文は抜け落ちた。日銀は2021年4月に「前向きの循環メカニズム」の文言を復活させていた。
金融環境については、前回に続き「企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態」とした。
<金融政策は現状維持>
政策金利の目標は賛成8、反対1で据え置きを決定した。短期金利は、引き続き日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用。長期金利は、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買い入れを行う。片岡剛士委員は長短金利引き下げで金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。
長期国債以外の資産買い入れ規模は据え置いた。当面、上場投資信託(ETF)は年12兆円、不動産投資信託(REIT)は年1800億円の残高増加ペースを上限に必要に応じて購入する。
コマーシャルペーパー(CP)・社債は3月末までの間、合計約20兆円の残高を上限に買い入れを行う。4月以降は感染症拡大前と同程度のペースで買い入れを行い、買い入れ残高を感染症拡大前の水準に徐々に戻していく。
日銀は2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続する。
当面は感染症の影響を注視し、必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和を講じると改めて表明した。政策金利は、現在の長短金利の水準またはそれを下回る水準で推移すると想定しているとした。
(和田崇彦、杉山健太郎 編集:石田仁志、田中志保)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab