金融政策維持の公算、金利変動幅も据え置きへ 黒田総裁最後の決定会合

金融政策維持の公算、金利変動幅も据え置きへ 黒田総裁最後の決定会合
 3月3日、日銀は9―10日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決める見通しだ。写真は日銀の黒田総裁。都内で2019年12月撮影(2023年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 6日 ロイター] - 日銀は9―10日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決める見通しだ。10年国債金利の変動幅も上下0.5%で据え置く公算が大きい。イールドカーブのゆがみは解消されていないが、日銀は共通担保オペも活用しながら、引き続き機動的に市場調節を行い、一連の対策の効果を見極めるとみられる。
日銀は昨年12月、イールドカーブ(利回り曲線)で10年債の金利が相対的に低くなるなど金利の適正水準が見えづらくなっており、こうした状況が続けば社債発行など企業金融に悪影響が及ぶおそれがあるとして10年金利の変動幅をプラスマイナス0.25%からプラスマイナス0.5%に拡大した。
しかし、イールドカーブ上で10年金利がくぼんだ状況は続いている。1日発表の債券市場サーベイ2月調査では、市場機能度判断DIが2015年2月の調査開始以来の最低を更新した。
田村直樹審議委員は2月22日の記者会見で、昨年12月の長期金利の変動幅拡大後も「(債券市場の)機能低下が解消したと言える状況になっていないのは事実だ」と述べた。その一方で、日銀ではイールドカーブが適正な形状となり、市場機能が改善するにはまだ時間を要するとの見方が目立つ。高田創審議委員は2日の記者会見で、適正な金利形成には「相応に時間が掛かる」との見方を示している。
イールドカーブについては、5年物共通担保オペや日銀のマイナス金利撤廃観測の後退で短中期ゾーンが落ち着いているほか、国債買い入れ増もあって超長期ゾーンには低下圧力が掛かっている。
日銀は1月に共通担保オペの拡充を決定。2月には、国債補完供給に関連して10年物国債のカレント銘柄の一部を対象に最低品貸料の引き上げを打ち出した。海外投機筋を中心とする空売りの抑制が狙い。引き続きオペ運営を工夫しながら、一連の措置の効果を注視していく構えだ。
今回の決定会合は黒田東彦総裁の任期中最後の会合となる。市場では政策修正への思惑がくすぶっているが、日銀では前回1月会合時点と比べ経済・物価の見方に大きな変化がない中で政策修正するのは適切ではないとの声が根強い。日銀が物価目標達成に向けてカギとみる企業の賃上げについてもまだ見極めが必要な状況だ。
3月年度末を前に、日銀の政策修正が市場のかく乱要因になるのは避けたいとの声も多く、金利変動幅の上限再拡大やイールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃は見送られる公算が大きい。
(和田崇彦、木原麗花 編集:石田仁志)

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