FOMC:識者はこうみる

FOMC:識者はこうみる
米連邦準備理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.75%ポイント引き上げ、3.00─3.25%とした。2013年7月、ワシントンで撮影(2022年 ロイター/Jonathan Ernst/File Photo)
[21日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は20─21日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.75%ポイント引き上げ、3.00─3.25%とした。
市場関係者のコメントは以下の通り。
●ドル上方向、日米金利差と安全資産需要で
<ステート・ストリート銀行東京支店・共同支店長 若林徳広氏>
米連邦公開市場委員会(FOMC)は市場予想通りの結果だった。ジャクソンホール会合でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長講演をフォローアップした格好で、タカ派姿勢は変わらなかった。
  米FOMCの結果とパウエル議長の会見でドルは上下に振れたものの、最終的にマーケットは上方向という判断をした。景気後退懸念が意識され、ドル売りにつながる場面もあったが、市場は再び金利というテーマに戻ったとみられ、日米金利差がより意識されていく。また、ロシアのプーチン大統領の軍動員令を受けてウクライナ情勢が緊迫化しており、安全資産としてもドルは選好される。
日本当局によるレートチェックや為替介入に対する警戒感は強まりやすい。仮に実施されたとしても、ドル高のトレンドを変えることは難しい。
目先は145円を超えるかどうか注目。同水準を超えれば、147円を目指していく展開になるとみている。
●株に過度な悲観不要、タカ派でも大きな姿勢変化なし
<ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏>
景気見通しを引き下げながら利上げペースを緩めないことが示され、全般的にタカ派の会合となった。ただ、政策金利見通しが市場の見方を上回ったものの、大きく乖離したわけではなく、米国市場の評価もまだ定まっていないだろう。米株はいったん下落した後に急上昇する場面があり、最終的に急落した。
ただ、株式市場は過度に悲観する必要はないだろう。FRBはマイナス成長も視野に入れているようだが、従来と姿勢が大きく変わった訳ではない。タカ派とはいえ、利上げの見通しは見えてきた。年内は11月0.75%、12月0.5%、年明けに0.25%で利上げは一服しそうだ。来年は利上げはほとんどないとの見方に、いずれ変わっていくだろう。
市場の関心は、景気と企業業績に移ってきている。米国市場終盤の株安は、金利見通しというより、成長率見通しの引き下げが嫌気された可能性がある。ただ、多少のマイナス成長は、インフレ退治との引き換えとして市場も許容するようになるのではないか。
当面、株式市場のボラティリティは高くなりそうだ。経済統計をこなしながら評価が定まっていくだろう。米連邦準備理事会(FRB)は失業率の上昇を見込んでいても4%前半で、完全雇用に近い。不況に陥る状況ではなさそうだ。エネルギー価格も一時期に比べ落ち着いてきた。10─11月あたりには、景気はさほど悪くないとの実感が広がり、売りが一巡したら底入れムードが出てくる可能性がある。
●近く上下両方向のリスク認める可能性
<ノースウェスタン・ミューチュアル・ウェルスマネジメントのシニアポートフォリオマネジャー、マット・スタッキー氏>
注目すべきは0.75%ポイントの利上げそのものというよりも、声明の議論を踏まえると金融政策に上下両方向のリスクが生じつつあると少なくとも認める可能性があるということだ。これまでは政策の方向性は一方向だと考えられていたが、FRBがタカ派的領域に入り、市場が2023年に4.5%近辺のターミナルレート(金利の最終到達点)に迫るという見通しを織り込みつつあるという背景がある。
インフレのリスクは無論あるが、その逆側には経済全体のリスクがある。少なくとも現時点では景気の先行き見通しに対するリスクの高まりを明確に認めてはいない。FRBは引き続きインフレ退治に焦点を絞っている。声明を読む限り、今回の利上げは非常にタカ派的な動きだと言える。
●景気後退巡る懸念強まる
<キングスビュー・インベストメント・マネジメント(シカゴ)のポートフォリオマネジャー、ポール・ノルテ氏>
FRBは非常にタカ派だった。30年債の価格上昇(利回り低下)は市場が今後12カ月で米経済がリセッション(景気後退)に陥る可能性がかなり高まったとみていることを示している。市場ではボラティリティーの高い状況が続く見通しだ。週末23日か週明け26日までは様子見姿勢を取るつもりだ。
●株価は当面上値重い
<リバーフロント・インベストメント・グループの最高投資責任者(CIO)、ケビン・ニコルソン氏>
「タカ派色の強いFRBの発言は、インフレ抑制に向けて取り組む姿勢を改めて示した。ドットチャートの2022年末時点の政策金利見通し(中央値)は4.375%となっており、株式市場は当面上値が重い展開になるとみられる。金利がこれほど急激に上昇していることを踏まえると、株価は今後、企業収益に左右される。FRBが利上げでインフレ抑制を目指す中、債券が再び注目資産となりつつある。
インフレ率の大幅鈍化が確認できるまで利上げを継続するというFRBのメッセージを金融市場はようやく理解しつつある。利上げの継続を予想しているが、最終的な金利水準は誰にも分からない。
●11月に再び0.75%追加利上げへ
<オールスプリング・グローバル・インベストメンツのシニア投資ストラテジスト、ブライアン・ジェイコブセン氏>
異常が常態化した。FRBは今回も0.75%ポイントという異例の大幅利上げを決定しただけでなく、基本的には11月にも再び0.75%ポイントの追加利上げを決定することを示唆した。このような利上げでも将来的に痛みを引き起こすことはないという考え方は経験よりも希望が勝っているということだ。
●かなりタカ派、年内一段利上げに道
<カーソン・グループのチーフ市場ストラテジスト、ライアン・デトリック氏>
かなりタカ派的な75ベーシスポイント(bp)の利上げで、(FRBは)年内のさらなる利上げに大きく門戸を開いた。ドットチャートは、従来予想よりも大幅な利上げが行われることを裏付けている。
FRBは、年初からのインフレ高進抑制に向け、経済、そして潜在的には株式市場にかなりの痛みを与えることも辞さない構えだ。FRBの経済予想は全く期待外れだ。経済は急速に減速しているが、FRBはインフレ抑制のためそれを容認している。
●金利見通しの引き上げに市場は反応
<アリーのチーフ市場・金融ストラテジスト、リンジー・ベル氏>
0.75%ポイントの利上げは予想通りだったが。今後数年間の金利見通しが大幅に引き上げられたことに市場は反応した。市場は2023年の金利水準が低下することを望んでいたのだろうが、FRBは23年までの利上げ継続を見込んだ。
明るい材料は23年の金利見通しで、FOMCメンバーのうち6人が横ばい、1人が低下すると見込んでいることだ。
ただ、今回のメッセージは基本的にFRBが今後も積極的でタカ派姿勢を維持することを示している。これが株価を圧迫し、年末に向けた上昇余地は乏しくなるだろう。
*内容を追加しました

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