焦点:豪債券市場、中銀とトレーダーが「全面対決」

焦点:豪債券市場、中銀とトレーダーが「全面対決」
 10月22日、オーストラリアの債券市場は、中銀当局者が金利を数年間にわたり過去最低水準に維持できると主張しているにもかかわらず、利回りとインフレ期待が急上昇し、トレーダーと中銀による「全面対決」の様相を呈している。写真はシドニーのオーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)本部前にたたずむトキ。2018年2月撮影(2021年 ロイター/Daniel Munoz)
[シンガポール 22日 ロイター] - オーストラリアの債券市場は、中銀当局者が金利を数年間にわたり過去最低水準に維持できると主張しているにもかかわらず、利回りとインフレ期待が急上昇し、トレーダーと中銀による「全面対決」の様相を呈している。
オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)は22日、債券市場で10億豪ドル(7億5000万米ドル)規模の買い入れオペを実施。短期金利を低位安定させるという中銀の決意を試そうとした投資家を落ち着かせるのが狙いだった。
しかし、中銀当局者と市場関係者のギャップは埋まっていない。中銀当局者は、利上げは2024年以降と繰り返し発言。一方、市場は来年下期の利上げ開始と、23年末までの100ベーシスポイント(bp)の利上げを織り込んでおり、両者の食い違いは世界で最も大きな部類に入る。
債券はすでに今月に入って世界的に売りを浴びている。とりわけオーストラリアは3年債先物が約10年間で最も激しい下げとなり、中銀のハト派的な言い回しに乗ってポジションを取っていた投機筋が大きな痛手を被った。
バンク・オブ・アメリカ・セキュリティーズ(シドニー)のマーク・エルワーシー氏は「金利は世界的に上昇しており、豪中銀はある時点で、長期間にわたり低金利を続けるとの確約を撤回しなければならなくなるだろう」と述べた。
この数週間にエネルギー価格とインフレ率が上昇して豪中銀の予測は信頼が粉々に砕け、「ちょっと、めちゃくちゃな状態」だという。
国債は先物の取引量が現物を大幅に上回り、先に3年債先物が2年ぶりの安値を付け、10年債先物も7カ月ぶりの安値に沈んだ。
<今回は中銀の勝ち>
豪中銀は22日に市場介入によって売り圧力を抑え、指標とする2024年4月償還債の利回りを0.19%前後から0.12%前後に押し下げた。しかし、それでも中銀の目標値である0.1%をわずかながら上回っており、エルワーシー氏をはじめとする市場関係者は、今回の中銀の対応で投資家の疑念が払拭されたとは見ていない。
中銀の最新の予測によると、中銀はインフレ率を1.75%に抑えることが可能だと見ている。しかしANZなどのアナリストは、27日に発表される四半期消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が1.8%になると予想している。
ノムラのストラテジスト、アンドルー・タイスハースト氏は「今回は中銀が勝利した」が、27日のCPI発表と11月2日の次回金融政策会合という次の勝負が迫っていると指摘。「11月の会合は市場にとって非常に重要であり、(利回りの)目標が引き下げられる可能性は十分にある」と述べた。
中銀のロウ総裁は22日のオンラインのイベントで、インフレ高進を注視しているとしつつ、賃金の高い伸びが続かない限り高いインフレは一時的なものにとどまるとの見方を示した。
総裁は1カ月前には、賃金の伸びは低迷しており、オーストラリアの賃金とインフレの動きは諸外国とは異なることから、「なぜ来年や2023年初めの利上げが織り込まれているのか理解に苦しむ」とも述べた。
ロウ総裁のハト派的な姿勢は、ニュージーランド準備銀行(中央銀行)のタカ派姿勢と対照的だ。ニュージーランド中銀は先に7年ぶりの利上げに踏み切った。
FIIGの債券部門ディレクター、スティーブン・マッキー氏は「諸外国がコロナ後に向けて動き出しているのに、豪中銀は2024年まで金利を動かさないと、いつまで言っていられるだろうか」と中銀の姿勢に疑問を呈した。
(Tom Westbrook記者)

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