日経平均が約30年ぶり2万9000円回復:識者はこうみる

日経平均が約30年ぶり2万9000円回復:識者はこうみる
 2月8日、日経平均株価は2万9000円を回復、取引時間中として1990年8月以来の高水準を付けた。都内で撮影(2021年 時事通信)
[東京 8日 ロイター] - 東京株式市場で、日経平均株価は2万9000円を回復。バブル崩壊後の高値を更新し、取引時間中として1990年8月以来の高水準を付けた。
市場関係者の見方は以下の通り。
●米追加経済対策の早期成立へ期待感
<みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト 三浦豊氏>
日本株の大幅上昇の背景には米国の追加経済対策がある。5日に発表された1月の米雇用統計は市場予想を下回ったものの、これにより大規模な追加経済対策への必要性が高まり、株価は皮肉にも上昇する格好となっている。セクター別にみても、景気敏感株は優位となっており、ポジション調整でバリュー株の買い戻しが強まっているようだ。
米追加経済対策法案は財政調整法により民主党単独での可決が可能となり、早期成立への可能性が高まった。加えて、法案に織り込まれている個人向け現金給付も満額の見通しという。個人投資家は給付金を株式運用に充てるだろうとの思惑も働いているのではないか。
国内においては、今週金曜日に控えているSQも上げ加速の要因となっているとみる。2万9000円から3万円までコールオプションの建玉残高が積み上がっているため、デルタヘッジや裁定買いなどで一段高となった可能性が高い。
●感染者減が高値警戒感薄める、TOPIX終値に注目
<野村証券 投資情報部投資情報二課課長代理 神谷和男氏>
TOPIXがバブル後最高値を更新してきたが、今後はコロナ禍の終息による経済の正常化と、高値警戒感がぶつかりながら株価を形成することになりそうだ。日経平均、TOPIXともに上値を取ってきたのは、米株が最高値を更新する中で、新規感染者数の減少によって高値警戒感が薄らいだためだろう。
30年来の高値を更新してきたということは、上値の目安がない、つまり、実質的に戻り待ちの売りが出てこないということを意味する。その点から、きょうの終値でTOPIXがこれまでの高値である1911ポイントより上値となるかどうかが重要だ。上値で終われば、テクニカル的に今度は1911ポイントを下値のめどとして値固めするとみられるが、下値で終わるとこれが上値の節目として意識されることになろう。
●期待先行の株高、目先は米予算教書に注目
<SMBC信託銀行 投資調査部長 山口真弘氏>
日経平均は2万9000円を回復したが、株価上昇の背景には米国の追加経済対策への期待と、足元の堅調な企業業績が挙げられる。ただ、先週から今週にかけて急ピッチで上昇し、2万9000円回復の達成感も広がりやすい水準だ。
企業業績の回復は市場もある程度織り込んでいた部分はある。ここまで日経平均が上昇すると「期待先行」という解釈の方がしっくりくる。割高感が残ったまま株高という動きになり、上昇スピードが速い印象は否めない。
目先は、米国の予算教書でバイデン大統領から増税について踏み込んだ発言があるかどうかに注目が集まる。イエレン米財務長官は財政拡大を基本としているので根本的に株高は続くと見込まれる。だが、増税に関する具体的な発言がみられれば、中長期的には足元の株高の熱を冷ます材料になる可能性があるだろう。
●トヨタが相場をリード、10日の決算発表に注目
<大和証券 チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治氏>
きょうのTOPIX急伸は、トヨタ自動車<7203.T>が完全にリードした格好だ。TOPIXに占めるTOPIXの時価総額はざっと3.5%で、同社の上昇はそのまま指数に寄与することになる。トヨタの決算は10日を予定しているが、主要系列企業7社がこれまで発表した決算で上方修正したのが6社で、同社が上方修正するとの期待が高い。きょうは好決算を発表した日本製鉄<5401.T>も大幅上昇したが、時価総額が大きい銘柄が買われたことが指数に反映され、東証1部時価総額も過去最高の707兆円を更新しそうな状況となってきた。
トヨタについては、TOPIXを意識してポートフォリオを組もうとしても、他の銘柄の購入資金が減ってしまうため、機関投資家はアンダーウエートする傾向がある。それを踏まえれば直近の上昇で、トヨタを買わざるを得ない状況となったのではないか。いずれにしても、当面は10日の決算内容が注目され、それが良ければ日本株に対する買い安心感は一段と高まることになりそうだ。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab