アングル:トヨタ、次世代EV電池技術の開発急ぐ

アングル:トヨタ、次世代EV電池技術の開発急ぐ
 10月31日、トヨタ自動車は、2020年代前半までの実用化に向け、電気自動車(EV)用次世代バッテリー技術「全固体電池」の開発を急いでいる。写真はジュネーブで3月撮影(2017年 ロイター/Arnd Wiegmann)
[東京 31日 ロイター] - トヨタ自動車<7203.T>は、2020年代前半までの実用化に向け、電気自動車(EV)用次世代バッテリー技術「全固体電池」の開発を急いでいる。
全固体電池は既存のリチウムイオン電池の液体電解質を固体電解質にした次世代の大容量電池だ。安全性が高いことも同技術の利点となる。
トヨタの内山田竹志会長は、27日の東京モーターショー開幕前に行われたインタビューで、「開発を検討している次世代バッテリー技術がいくつかある。その中でも最も有望なのは全固体電池だ」と発言。
その上で「この技術の開発に取り組んでいるが、量産するにはまだ課題がいくつか残っている」と指摘した。
大きな課題の1つはバッテリー寿命だ。内山田会長によると、トヨタは全固体電池技術で想定されるすべての潜在性能を達成できる生産のノウハウを開発したものの、一般的な自動車で見込まれるバッテリー寿命を備えた量産方法はまだマスターしていないという。ガソリン車では20万キロ以上の走行距離は一般的とされる。
同会長はEV用バッテリーの寿命がどの程度必要とみているかには言及しなかったが、「3年でバッテリー交換では誰も買わない」と指摘した。
だがトヨタはこの新たな技術の実用化に自信があるようだ。
ディディエ・ルロワ副社長は25日、記者団に対し「全固体電池は走行距離を大幅に改善する可能性があり、ゲームチェンジャーになり得ると確信している」と語った。
トヨタは引き続き水素燃料電池車技術も推進しているが、内山田会長は、同社は「反EV」ではなく、全固体電池などEV技術に大規模な投資を行っていると強調した。
「プリウスの父」と呼ばれ、20年前に世界の自動車業界を電動化への道に導いた同会長は、将来的なガソリン車の代替としてEVと水素燃料電池車の両方が必要だとみている。
<容量2倍で高い安全性>
トヨタは、全固体電池がリチウムイオン電池の2倍の容量を備え、フル充電でのEVの走行距離向上につながるとみる。
バッテリー容量が大きくなれば、トヨタはEVのバッテリー駆動システムの生産コストも削減できる。
リチウムやコバルト、マンガン、ニッケル、アルミニウムなどの部材をそれほど必要とせず、EV駆動システム全体のサイズを縮小できる。
トヨタの別の関係者は「自動車生産において小型化、軽量化は一般的に生産コストの低下を意味する」と指摘した。
全固体電池の実用化は、EVを現在のガソリン車と同じくらい手頃な価格にする鍵になる可能性がある。
専門家によると、そのためには現在1キロワット時当たり200ドル弱のバッテリーコストを100ドル前後に押し下げる必要があるという。
世界の自動車メーカーはEVの低い利益率の拡大を目指し、バッテリーの生産コスト削減にしのぎを削っている。
日産自動車<7201.T>のダニエレ・スキラッチ副社長は「2025年ごろが転換点になるとみている」とし、「そのころには顧客にとってガソリン車とEVの購入コストは実質的に同じになっているだろう。価格が同じなら従来の技術を買う理由はあるだろうか」と指摘した。
全固体電池技術は安全性も高い。既存のリチウムイオン電池は液漏れが起きたり、異常発熱時などに発火する恐れがあることで知られる。しかし、トヨタの内山田会長は全固体電池技術ではそうしたリスクが軽減されるという。
また同技術では、リチウムイオン電池のようにセルを重ねて端子で結ぶ必要がなく、自動車の設計で座席周辺のスペースを広げたりする柔軟性が高まる。
内山田会長は「かなり革新的な技術と言える。他社も全固体リチウムイオン電池技術に着目し、安全性や容量の向上を目指しているのは確かだ」と指摘した。

白水徳彦 編集:石田仁志 編集協力:佐藤久仁子

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab