焦点:中国人民元、1ドル=7元の節目突破か 膨らむ売りヘッジ

焦点:中国人民元、1ドル=7元の節目突破か 膨らむ売りヘッジ
 10月30日、中国人民元が1ドル=7元という心理的な節目に迫るにつれて、投資家は当局が最終的にこの水準よりも元が安くなるのを容認するとの見方を強めつつある。2016年撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)
[香港/上海 30日 ロイター] - 中国人民元が1ドル=7元という心理的な節目に迫るにつれて、投資家は当局が最終的にこの水準よりも元が安くなるのを容認するとの見方を強めつつある。ただ同時に投資家が確信しているのは、過去のような元の急落や中国株暴落が起きる事態は当局が決して許さないという点だ。
米中が初めて互いに制裁関税を発表した今年3月以降で元はドルに対して10%下がり、10年ぶり安値の1ドル=7元にじりじりと近づいている。
人民銀行(中央銀行)は今の元安の流れに直接介入はしていないが、過度の変動は受け入れないというシグナルは発してきた。政策立案に関与している複数の人々はロイターに、元が急落すれば当局はそれに立ち向かうと語った。
もっとも外貨準備や商業銀行のオペレーションに関するデータからは、資金流出額が増えている様子がうかがわれ、恐らく投資家が元安に賭けているのだろう。
MUFG(香港)のグローバル市場調査東アジア責任者クリフ・タン氏は「中国の市場参加者がヘッジしたいと考えるのは当然だ。これは資金流出が増加しているサインだが、資本逃避のサインではない」と話した。
実際、中国株が暴落し元が11%も値下がりした2015─16年の状況が再現されると予想する向きは乏しい。こうした出来事があった後に導入された厳格な資本規制はまだ存続しており、企業の対外債務は減って、いざというときに通貨を守るための外貨準備を中国は依然として3兆ドル保有している。
それでも米中貿易摩擦や米国債の利回り上昇、中国国内の金融緩和を踏まえ、投資家は盲目的に元が安定すると信じてはいない。
今年初めから中国で商業銀行が市場を通じて売却した外貨は281億ドルに上り、外貨を市場から吸い上げていた昨年と様変わりした。これらの銀行が9月に個人の顧客に売った外貨は差し引き176億ドルと15カ月ぶりの高水準だった。
INGホールセール・バンキングの広域中華圏エコノミスト、アイリス・パン氏は「このデータは、輸入業者を含む多くの国内市場参加者が今後ドルがさらに上昇するとともに元が弱くなると考えていることの表れだ」と説明した。
イートン・バンス・マネジメントのグローバル・インカム・グループの共同ディレクター、エリック・スタイン氏は、自身のチームが過去5カ月前後ずっと元を売り持ちにしていると明らかにした。
「中国の現在の政策は、通貨が大幅ではなく緩やかに弱くなることを志向している。それは恐らく、売り持ちポジション拡大の背中を押してくれるだろう」という。
元売り持ちはここ数カ月間、有効なヘッジとして機能していると話すのは、M&Gインベストメンツで「ダイナミック・アロケーション・ファンド」の運用に携わっている投資スペシャリスト、グラツィアーノ・クレペリオ氏だ。
105億ドル規模の同ファンドの純資産価値の約6%は元売り持ちの取引に向けられ、全体の2%を占める中国株の買い持ちをヘッジしている。
クレペリオ氏は「われわれは株式に対して非常に強気だ。もし強気が行き過ぎているとすれば、元が下落すると予想される」と述べ、元売り持ちは少なくともある程度のバッファーや保険になるとの見方を示した。
中国当局が投機筋の元売り持ちのコストを引き上げているにもかかわらず、オプションやフォワード市場では、近く1ドル=7元に達すると見込むポジションは膨らみつつある。
とはいえ、フローは小規模だ。中国の外貨準備は年初からわずか530億ドル程度目減りしただけで、15─16年に使われた数兆ドルと比べれば微々たる額だ。シティの中国通貨ストラテジスト、ルー・スン氏は「企業から聞いた話に基づけば、パニックという感覚はない。銀行経由で資金が出て行っているものの、最近数カ月は毎月およそ100億ドルで、15年終盤は1000億ドル前後だった」と指摘した。
(Noah Sin、Winni Zhou記者)

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