コラム:仮想通貨取引所の「お粗末な実態」

コラム:仮想通貨取引所の「お粗末な実態」
 9月29日、仮想通貨の魅力の1つは規制から自由なことだが、それが最大の弱みにもなりつつある。写真はビットコイン。パリで6月撮影(2017年 ロイター/Benoit Tessier/Illustration)
Antony Currie
[ニューヨーク 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 仮想通貨の魅力の1つは規制から自由なことだが、それが最大の弱みにもなりつつある。ロイターの調査によると、ビットコインやイーサリアムの取引所の多くは、参加者の身元や詐欺行為、技術、さらには取引高さえも把握できていない。
こうした問題を修復しなければ、仮想通貨はキワモノに終わってしまうだろう。
これらの取引所はハッキングに弱い。例えばクラーケンは5月、イーサリアムの価格が70%も暴落する中でサービス妨害攻撃に遭った。相場急落時に取引を中断するサーキットブレーカー制度の欠如により、事態はさらに悪化し得る。
ロイターの調査によると、仮想通貨の窃盗も日常茶飯事だ。2011年以来、ビットコインの窃盗は少なくとも36件あり、約98万コインが盗まれた。現在のレートでは40億ドルに相当する。伝統的な取引所なら必ず要求する基本的なセキュリティーチェックや身元確認を求めない取引所もある。ポロニークスという取引所は一部のユーザーに対し、名前とメールアドレス、国しか照会しない。また、元従業員によると、一部の中国取引所は注文を引き付けるために出来高を水増ししていた。
バーンスタインのアナリストによると、仮想通貨の総額は9月18日時点で約1400億ドルと、過去1年間で10倍以上に増えた。うち約半分がビットコインで、そのレートは過去10日間でまた10%上昇した。
バブルの臭いがするだけでなく、変動が激しい分なおさらリスクは高い。仮想通貨で資金調達を手掛ける投機家は喜ぶだろうし、犯罪者も群がってくるだろう。モルガン・スタンレーが最近開いたイベントでは、米連邦捜査局(FBI)が資金洗浄(マネーロンダリング)対策に費やす時間のうち、仮想通貨絡みの案件が4分の3を占めるようになっている実態が明らかにされた。FBIによると、身代金要求型ウイルス「ランサムウエア」の大半は現在、ビットコインその他の仮想通貨による支払いを要求してくる。
JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)はは最近ビットコインについて「チューリップの球根(バブル)よりたちが悪い。詐欺だ」と述べた。そうした印象を払しょくするためには、取引所を大幅に改良する必要がある。
●背景となるニュース
*ロイターの独自調査によると、多くの仮想通貨取引所はハッカー攻撃への脆弱性や窃盗、資金洗浄対策の欠如など問題が山積している。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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