トランプ氏の政府閉鎖示唆、金融市場に波紋

トランプ氏の政府閉鎖示唆、金融市場に波紋
 8月23日、トランプ米大統領がメキシコ国境沿いに壁を建設するための予算を確保できなければ政府機関閉鎖も辞さないと述べたことを受け、米金融市場に波紋が広がった。写真は22日、米アリゾナ州の集会場に到着したトランプ氏(2017年 ロイター/Joshua Roberts)
[ニューヨーク/ワシントン 23日 ロイター] - トランプ米大統領がメキシコ国境沿いに壁を建設するための予算を確保できなければ政府機関閉鎖も辞さないと述べたことを受け、23日の米金融市場に波紋が広がった。
トランプ大統領は22日、アリゾナ州フェニックスで開かれた支持者の集会で、壁建設のための予算確保のために政府閉鎖のリスクもいとわない考えを強調し「政府を閉鎖しなければならなくても、壁を建設する。国民は移民規制に票を投じた」と述べた。
発言を受け、この日の米株式市場では主要3指数がそろって下落。外国為替市場ではドルが主要通貨に対し下落したほか、債券市場では米国債に安全買いが入ったことで利回りが低下した。
議会は夏季休暇明けの9月5日以降、政府閉鎖を回避するための措置を可決させるために12営業日しか残されていないほか、連邦債務上限引き上げの期限も迫っている。こうしたタイミングでの発言に対し共和党内からも批判が続出。共和党幹部のライアン下院議長は記者団に対し、壁建設は必要だが、政府は国境警備と政府機関閉鎖のどちらかを選ぶ必要はないとし、「閉鎖は誰の利益にもならない」と述べた。
このほか共和党の重鎮トム・コール下院議員はロイターのインタビューに対し、政府機関閉鎖は非常に「愚かしい」ことで、こうしたことは共和党のためにならないと指摘。「ホワイトハウス、議会両院を支配している時に政府機関を閉鎖することは政治的に賢明とは言えず、現実的に成功するとは思えない」と述べた。
民主党のシューマー上院院内総務もトランプ氏の発言について「誰もが望まない」政府閉鎖を招く恐れがあると批判。声明で、トランプ大統領が共和・民主の両党、さらに大半の米国民の意思に反した方向に進めば「誰もが望まぬ政府閉鎖に追い込まれ、何ら良い結果はもたらさない」との考えを示した。
こうしたなかホワイトハウスのナタリー・ストローム報道官はトランプ大統領は壁建設費用の確保に向け議会とともに取り組んでいくとの見解を表明。
ホワイトハウスはまた、トランプ氏の壁建設費用拠出の呼び掛けを支持する10人の下院議員のコメントを集めた声明を発表。これらの議員は主に共和党の保守派下院議員で構成する「フリーダム・コーカス」のメンバーで、そのうちの1人であるジム・ジョーダン議員はロイターに対し、政府機関が閉鎖された場合、責任は民主党のシューマー上院院内総務のほか、民主党議員にあるとの考えを示した。
市場ではトランプ氏が政府機関閉鎖を警告したことは米国の信頼感を損ねる恐れがあるとの見方が出ている。ジョーンズ・トレーディングの首席市場ストラテジストのマイケル・オルーク氏は、トランプ氏のこうした発言は「誰に対する信頼感も呼び起こさない」と指摘。単なる交渉上の戦術だったとしても、多くの米国民のほか、金融市場関係者は壁建設費用捻出のために政府機関を閉鎖する価値はないと考えたはずだとしている。
こうしたなかフィッチ・レーティングスはこの日、米国が連邦債務上限を適切な時期に引き上げられなければ、「AAA」格付けを引き下げ方向で見直す可能性を示唆。声明で「債務上限を巡る瀬戸際戦術は、最終的に格付けに影響を及ぼす恐れがある。上限を引き上げられなければ、債務返済などの義務を履行する米財務省の能力が危うくなる」と指摘した。
*写真を追加します。

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