ブログ:マーメイドとして生きる

ブログ:マーメイドとして生きる
 8月15日、経済的苦境に陥るブラジルの病院で治療を受けている障害児たちは、伝説上の海の生物に元気をもらっている。その生物とは、マーメイドだ。写真は、マーメイドになるトレーニング中のルチアーナ・フゼッティさん。リオデジャネイロで7月撮影(2017年 ロイター/Pilar Olivares)
[リオデジャネイロ(ブラジル) 15日 ロイター] - 経済的苦境に陥るブラジルの病院で治療を受けている障害児たちは、伝説上の海の生物に元気をもらっている。その生物とは、マーメイドだ。
今回のマーメイドは、かなりリアルだ。
キャロル・カタンさんは、10年のあいだ獣医師として働いた後、2012年からマーメイドとして、またマーメイドになる方法を教えることで生計を立てている。子ども向けパーティーのようなイベントでパフォーマンスすることで収入を得る一方、病院でのボランティア活動に時間を注いでいる。
車椅子の子どもと接することができるよう自身も車椅子に乗ったカタンさんは、病院でのボランティアについて、最もやりがいのある経験だと話す。
光り輝くグリーンの長い尾っぽがついたコスチュームに身を包み、カタンさんは幼い患者たちとおしゃべりする。「彼らは自分たちが大切な仲間だと感じている」と、カタンさんは言う。
「とても素晴らしく、満ち足りた時間を過ごしている」
ブラジルは、過去100年間で最悪となるリセッション(景気後退)に見舞われており、カタンさんの仕事に対する需要は減少したが、テレビのメロドラマのおかげで回復したという。同ドラマは、水族館でマーメイドとして働くために、家族をだます女性を描いている。
ドラマの主人公のように、カタンさんも夏のあいだは水族館に雇われているが、教室やパーティーでの仕事が大半を占めるという。イベントでプールがあれば、お決まりのパフォーマンスを行うが、そうでなければ、「マーメイド」はひじ掛け椅子に鎮座ましましている。
カタンさんは、小さいときからマーメイドが大好きで、両足をつけたまま泳ぐ練習をしていたと語る。影響を受けたのは、ダリル・ハンナ主演の1984年の映画「スプラッシュ」だ。ブロンドの髪をなびかせ、長い赤色の尾っぽを持ったマーメイドが登場する。
「ひかれたのは長い髪ではなく、とても大きな尾っぽだった」とカタンさん。「素晴らしいと思った」
カタンさんは毎日練習し、コンディションが最高なら息継ぎなしで最大4分間、水中にいられる。
マーメイドになる方法を教えたり、パフォーマンスで生計を立てたりすることは非常に珍しいと思うかもしれないが、町にはカタンさんのほかにもマーメイドがいる。
首都ブラジリアでバレエダンサーから市民権指導者に転身したタイス・ピッキさんは4年前、ストレスを緩和する方法を探していたときにマーメイドの世界に飛び込んだ。
ダイビングにのめり込み、水中ダンスのレッスンを探し求めていたところ、マーメイドの動きを学べる講座のあることを知った。ピッキさんは昨年、フィリピンで1カ月に及ぶコースを受講し、フリーダイビングとマーメイドのスキルを学んだ。
ピッキさんは現在、ブラジル各地で教えている。
「恋に落ちてしまった」とピッキさん。生徒の多くが、マーメイドというと、美しさや官能、自由や母性を連想すると、ピッキさんは話す。
「マーメイドの格好になったとたん、そうしたことになりきって、クラスの雰囲気が変わってしまう」
マーメイドに親しみを抱いているのはブラジル女性だけではない。遠く離れた米テキサス州でもクラスが開かれている。マーメイドが次のフィットネスブームになるかもしれないと考えている人もいる。
(写真:Pilar Olivares 文責:Alexandra Alper)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab