アングル:コインチェック買収のマネックス、登録や仮想通貨特有のリスクも

アングル:コインチェック買収のマネックス、登録や仮想通貨特有のリスクも
 4月6日、マネックスグループの傘下に入ったことで、コインチェックはガバナンスを再構築し、法令順守体制など金融機関としての基本を取り込むチャンスを得た。写真は東京で会見に臨むマネックスGの松本大社長(左)とコインチェックの和田晃一良CEO(2018年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 6日 ロイター] - マネックスグループ<8698.T>の傘下に入ったことで、コインチェックはガバナンスを再構築し、法令順守体制など金融機関としての基本を取り込むチャンスを得た。
しかし、仮想通貨流出事件が明らかにした問題点は多く、コインチェックが早期に仮想通貨交換業の「みなし業者」から登録業者にステップアップできるかは不透明だ。仮想通貨特有のリスクも内在しており、マネックスには予期せぬ事態に陥る可能性もある。
<コインチェックにはマナーがない>
コインチェックには、金融機関なら当然備わっているはずの「マナー」がない――。金融庁に登録済みの仮想通貨取引所のある幹部は、仮想通貨流出事件後にこう話した。
同幹部が所属する取引所は金融機関の傘下。金融庁の規制・監督を受けてきた銀行や保険など既存の業種は、利用者保護や法令順守の重要性はもちろん、当局との対話や間合いの取り方までが組織に染み込んでいる。しかし、それらがコインチェックには欠けているというのが同幹部の見方だった。
金融庁はコインチェックの経営体制について、事件発生直後から問題視していたが、ある幹部は「経営の話をしても通じない。事態の深刻さは分かっているようだが、議論がかみ合わない」と打ち明けた。
マネックス傘下に入ることで、コインチェックは金融機関としての基本的な経営管理体制を構築できる機会を得ることになる。コインチェックには、勝屋敏彦新社長を筆頭に、マネックスの複数の経営幹部が入って再建を担う。
一方、マネックスは仮想通貨ビジネスへの参入を模索してきた。1月には仮想通貨研究所を立ち上げ、グループ傘下のマネックス証券が仮想通貨交換業の新規登録の申請に向けて準備してきた。
マネックス証券が仮想通貨交換業を営む場合、交換業の登録のほかに、金融商品取引法上の業務範囲規制があるため、「付随業務」として仮想通貨交換業ができるかどうかについて金融庁の承認を得る必要があった。今回のコインチェック買収で、マネックスはその時間を短縮化させることができたとみられる。
<本当に時間を買ったのか>
コインチェックは、仮想通貨交換業の「みなし業者」として、順次サービスを再開している。しかし、業者としての登録というハードルが残っている。
6日の会見で、マネックスGの松本大社長は、2カ月程度で登録との目標を示したが、目標通りに行くかは不透明だ。
金融庁は、コインチェックの経営体制がマネックスGの傘下で実効的なものになるのか慎重に見極める方針。さらに、「コインチェックがクリアすべき問題は経営体制だけではない」(幹部)。業務改善命令には、扱う仮想通貨のリスクの洗い出し、マネーロンダリング・テロ資金供与防止対策など課題が並ぶ。「金融庁の審査は厳しいだろう。コインチェックの買収で、決して時間を買ったことにはならない」(マネックス関係者)との声も出ている。
<マネックスが抱え込んだリスク>
マネックスが2014年に静岡銀行<8355.T>と資本業務提携した際、金融庁のある幹部はフィンテック推進の観点から提携を評価した。しかし、今回の買収については、金融庁内では「マネックスはコインチェック救済のため、難しい選択をしたのではないか」との声が出ている。
今回の買収のメリットについて、マネックスGの松本社長は、コインチェックのブランド力や顧客基盤、技術力を挙げた。
しかし、コインチェックで流出被害に遭った利用者による訴訟リスクや、「どれほど技術を工夫しても仮想通貨の流出リスクがゼロになることはない」(専門家)という仮想通貨特有のリスクも指摘されている。
松本社長は会見で「リスクは管理できる」と話した。経営改革を迫られるコインチェックのみならず、松本社長の手腕もまた、問われることになる。
*写真を追加します。

和田崇彦 編集:布施太郎

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