出口対応の局面に至っていない=黒田日銀総裁

出口対応の局面に至っていない=黒田日銀総裁
 1月23日、日銀の黒田東彦総裁(写真)は金融政策決定会合後の記者会見で、足元の景気は緩やかに拡大しているものの、物価は「2%の目標になお距離がある」として、大規模な金融緩和を縮小する「出口対応の局面に至っていない」と指摘した。都内の日銀本店で撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 23日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は23日の金融政策決定会合後の記者会見で、足元の景気は緩やかに拡大しているものの、物価は「2%の目標になお距離がある」として、大規模な金融緩和を縮小する「出口対応の局面に至っていない」と指摘。現在の大規模な金融緩和を継続する姿勢を改めて強調した。
<市場動向で「オペが難しくなることない」>
日銀が9日実施した超長期債の買い入れ額が市場の予想を下回り、為替市場がこれを材料視し円高方向に振れ、日銀側の対応に注目が集まっている。会見で黒田総裁は「日々の国債買い入れが、先行きの政策を示すことはない」と述べ、国債買い入れ額の減額をもって日銀が金融緩和の縮小を目指していることはないとの立場を改めて強調した。
為替市場の一部では、今回のオペ減額を受けた円高進行で日銀は当面国債買い入れを減額できないとの観測もある。これに対して総裁は「市場動向でオペが難しくなることはない」とも述べ、否定した。
年初来の円高進行は「オペ減額が一因とマーケットの一部で言われているようだが、ユーロがドルに対して非常に強くなり、特に円高ということでもない」と反論した。
一方で、日銀が政策公表文に記している、年間80兆円(日銀残高増加分)の国債買い入れ額のめどについて「目標ではない」とも強調し、短期金利マイナス0.1%、長期金利(10年物国債利回り)ゼロ%に金利をコントロールできる限りは、国債買い入れ額は増減するとの立場を改めて示した。
<ETF見直し「ごく一部の議論」>
また日銀が公表している「主な意見」によると、金融政策を議論する審議委員の一部が、年間6兆円の上場投資信託(ETF)買い入れについて見直しの必要を示唆しているが、黒田総裁は「ごく一部の議論だ」として、早期見直し観測をけん制。ETF買い入れは「これまでのところ大きな役割を果たしている」「現時点でETF買い入れを見直す必要ない」「コーポレート・ガバナンスの面でも大きな問題は生じていない」と強調した。
今回公表した、先行きの経済・物価見通しを示す「展望リポート」では、企業や家計の物価見通しを示す予想物価上昇率についての判断を引き上げた。総裁は「予想物価上昇率が上昇すれば、実質金利低下で景気刺激効果は強まる」と指摘すると同時に、「予想物価上昇率が上がったから直ちに金利を上げる必要があるとは全く考えていない」とも述べ、市場でくすぶる長期金利目標の引き上げ観測をけん制した。
市場では黒田総裁が4月の任期満了後も続投するとの観測が根強い。今後も5年間日銀を引っ張っていく思いはあるか、との質問に対して「次期総裁は国会の同意を得て内閣が決定するものなので、何か申し上げるのはせんえつなので申し上げられない」と答えた。次期総裁に求められる資質として「グローバルな視点、さまざまな政策の選択肢を理論的に考える実践と理論分析を兼ね備えていること」とした。
朝鮮半島の地政学リスクは低下しているかとの質問に対して、日銀が取り上げる地政学リスクに同半島の「問題も含まれている」とした上で、「個人的な意見はあるが、日銀総裁としての発言は控える」とした。
*内容を追加しました。

竹本能文、伊藤純夫

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