金相場こうみる:世界株高でも下げ渋り、リスク分散で好環境続く=マーケットストラテジィ・亀井氏

[東京 20日 ロイター] -
<マーケット ストラテジィ インスティチュート代表 亀井幸一郎氏>
世界の株価が高値圏で推移しているにもかかわらず、金価格は1オンス=1400ドル後半で下げ渋っている。この裏には株高でもリスクオンになりきれない市場の現実があるとみている。
米中通商協議については、米ホワイトハウスは楽観的なスタンスを示しているが、実際に合意にこぎ着けるまでには様々なハードルがありそうだ。さらに、米上院が20日に香港人権法案を可決したとの報道は、協議に臨む中国の態度を硬化させ、米中交渉の阻害要因となるだろう。
「ウクライナゲート」とも呼ばれるトランプ米大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾調査では、選挙を控えたトランプ陣営にとって分が悪い状況となっている。
こうした状況から国民の目を逸らすべく、トランプ氏は外交政策で強硬姿勢をとり始めているため、金融市場では米国発の政治リスクが意識されやすく、結果的に金相場を下支えしている。
金融政策面では、景気拡大局面にもかかわらず、米連邦準備理事会(FRB)が予防的利下げを3回も実施した。FRBの金融緩和は株高に寄与したが、行き過ぎた株高をもたらしている可能性もある。株価の調整リスクを意識した投資家の間では、株式に投資する一方で、リスクヘッジとして金にも投資するという行動が促されやすい。
12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では金融政策の据え置きを予想するが、これを想定して金はすでに売られてきたため、FOMC後に買い戻しが入る余地があり、年末にかけて1500ドルを回復するとみている。
12月半ばにはFOMC(10―11日)や、英国の総選挙(12日)、米国の対中報復関税第4弾の残りの部分の発動予定日(15日)を控えていることもあり、当面市場は手放しのリスクオンになりづらく、マネーの分散先の金市場にとっては好環境が続きそうだ。

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