焦点:テスラの太陽光発電タイル、生産トラブルで広がる波紋

[サンフランシスコ/ロサンゼルス 8日 ロイター] - 米テスラが開発した住宅の屋根用タイルと太陽光パネルが一体化した「ソーラールーフ」の生産が、軌道に乗っていない。ニューヨーク州バッファローの工場における組み立てラインが抱える問題や、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が要求する「洗練されたデザイン」のハードルの高さが原因だ。テスラや同事業の提携先となっているパナソニック<6752.T>の社員および元社員8人がロイターに明らかにした。
パナソニックのある社員やテスラの元社員の話では、昨年開設されたバッファロー工場の生産が度々停滞するため、パナソニックは同工場内で製造してテスラに売るはずだったセル(単電池)やパネル(モジュール)の新たな買い手を模索せざるを得なくなっている。また工場に7億5000万ドルの補助金を提供したニューヨーク州の関係者からは、テスラが約束通りの雇用や投資を行うか疑念の声も聞かれる。
こうした生産トラブルは、テスラの太陽光発電事業自体の将来性にも一段と影を落とす。2016年にソーラーシティーを26億ドルで買収して太陽光発電に参入したテスラは、本業の電気自動車(EV)の増産に注力している半面、太陽光発電事業は縮小の一途をたどっているのだ。
ソーラールーフは、普通の屋根用タイルの外観を呈しながら発電機能を持つのが特徴だが、2つの要素を両立させるのがいかに難しいかが証明されつつある。
別の元テスラ社員は「見た目の美しさが重要なポイントでマスク氏は常に満足していない。それが大きな問題だ」と話した。価格面でも1ワット当たり6ドル近くと、全米平均のおよそ2倍に上る。
テスラはロイター向けの声明で、ソーラールーフの生産プロセスの改善を目指していると認めた。ただ現在の詳しい生産状況は明らかにせず、パナソニックからのセル購入に関してもコメントしていない。
一方パナソニックは、バッファローで製造した一部パネルをテスラに売る代わりに自社ブランドとして出荷している。セルについても、有望な買い手候補に対して見本として大規模に提供しているという。
パナソニックはほかの顧客へのセルサンプルの出荷についてコメントを控えた。その上で「ソーラールーフが本格販売される際には、当社製セルが使用されると認識している」と付け加えた。
ニューヨーク州議会の一部議員は、テスラの約束破りを懸念している。同州は工場建設に3億5000万ドル、設備費用として2億7470万ドル、その他費用に1億2530万ドルの補助金を供与。テスラ側は見返りとしてバッファローで工場の500人を含めて施設の完成から2年以内に1460人を雇い、10年間で50億ドルを投資しなければならない。
約束の履行を監視する責任を負うニューヨーク州の経済開発部門の広報担当者は、今のところテスラは義務を果たしていると述べた上で、もし合意に反すれば年間4120万ドルの制裁金支払いが生じると付け加えた。
しかしバッファロー工場周辺を地盤とするレイ・ウォルター州議会議員(共和党)は、3月に現地を訪れた際には工場のごく一部しか稼働していなかった点に不安を表明。「7億5000万ドルも納税者のお金をつぎ込んだ以上、テスラには結果を出してほしい。今は適切な方向に進んでいるようには見えない」と語った。
それでもテスラは、工場では現在約600人が働いており、すべての約束を守れる態勢になっていると強調した。
(Salvador Rodriguez and Nichola Groom記者)

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