ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨

[フランクフルト 14日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で、超緩和的な政策姿勢を維持した。主要政策金利を0.00%、中銀預金金利はマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。長期間低金利を維持し、必要なら追加刺激策を講じる方針も堅持した。
ドラギECB総裁の会見での発言要旨は以下の通り。
<デフレリスク解消>
デフレリスクが消えたと安心して言える。インフレ率が0.5━0.6%という、わずか1年前までみられた低水準に陥る可能性は確かに低下したと、こちらも安心して指摘できる。
<構造改革と財政バッファー>
予期せぬ事態が発生した場合に備え、政策の余地はあるだろうか。これは金融政策だけでなく、景気循環対策で対応できない予期せぬ事態に対する経済の耐久力を高める必要性にかかわってくる問題だ。このため、構造改革の必要性について、声明の前文で何度も言及してきた。われわれはこれを目指す必要がある。
突然の下降に対応するための財政政策の余地は非常に限られている。だからこそ、われわれはこの景気拡大による恩恵を利用して財政バッファーを再構築するよう呼び掛けている。
<インフレ>
われわれはインフレ率を2%に近いがこれを若干下回る水準とすることを目標としている。2%を超えた後に再び下げることがあってもよい。われわれは中期的な視野で話している。
インフレ率は自律的に持続可能で維持可能である必要がある。金融政策の支援があろうとなかろうと、こうした状態である必要がある。このため、金融政策支援の変更について議論するのは時期尚早だ。ただ(景気)拡大の勢いが増すなか、この目標に向けたわれわれの確信は増しており、前回の理事会の時点と比べると明らかに確信は強まっている。
<1.7%のインフレ率は目標到達と言えるのか>
1.7%のインフレ率は、ECBの目標である2%弱にどの程度近づいたと言えるのだろうか。ここで言えることは、インフレ率が中期的に自律的かつ持続可能とされる2%弱の水準への収束に向けてどの程度しっかりした足取りで進展しているかということが焦点となる。
ECBは実体経済における動向を踏まえ、インフレが来年こうした状況に向かうとの確信を強めている。労働市場の状況改善は、名目賃金に上昇圧力をかけることになる。これはECBが基調インフレの原動力のひとつとみなしている要素であり、総合インフレの持続的な改善に向けた原動力のひとつといえる。
<資産購入とインフレの関連性>
資産買い入れとインフレの関連付けをやめることについては討議しなかった。
まずここで、われわれは経済について「回復」ではなく、「拡大」という表現を用いていることについて言及しておきたい。
経済拡大に一段の弾みがつき、裾野が広がるなか、冒頭でも述べた通り、さまざまな形での刺激策を講じることは当然といえる。そのため、金利の道筋を示すフォワードガイダンスによる刺激策の重要性が一段と高まることになる。
<理事会はユーロ圏と米国の金利差拡大を懸念か>
(米国との)金融政策決定、したがって金利決定の違いは、異なる景気回復動向を映す。米国では一段と(回復が) 進む。(政策の違いに伴うユーロ圏経済へのマイナス影響は)把握していない。
<正しい方向に向かっている>
この日の理事会での討議は総じて、インフレが中期的に持続可能な軌道およびECBの目標に向かい収束することへの確信が強まっていることを反映した内容となった。成長に関するニュースは無論、極めてプラスなことであり、マクロ経済見通しの修正は正しい方向に向かっているといえる。
<金融刺激>
潤沢な金融刺激策はなお必要となっている。
<資産買い入れ規模は引き続き安定的>
金利に関する正式なガイダンスは引き続き変わらない。われわれは今後も月額300億ユーロのペースで資産買い入れを継続する。
<財政政策>
財政政策については、一段と堅調で裾野が広い(経済の)拡張は、財政バッファー構築の論拠を強める。こうしたことは公的債務が高水準にとどまっている国でとりわけ重要となる。
<原油・食品価格の値上がり>
9月時点でのスタッフ予想と比較して、欧州連合(EU)基準消費者物価指数(HICP)の見通しが上方修正されたが、これは主に原油価格や食品価格の値上がりを反映したものである。
<リスクは均衡>
ユーロ圏成長見通しを巡るリスクは引き続き概ね均衡している。信頼感指数のプラスの動向に支えられた力強い循環的な勢いによって、短期的に成長が予想外に上振れする可能性がある。一方、主に世界的な要因や為替市場における動向に起因する下方リスクがなお存在する。
<インフレ/金融刺激>
力強い循環的な勢いと経済に存在する緩みの大幅減は、インフレがECBの目標に向けて収束するとの確信を強める根拠となる。
半面、域内の物価圧力は引き続き総じて抑制された水準にあり、持続的な上昇基調にあることを示す確固たる兆候はなお確認されていない。
そのため、大規模な金融刺激が依然必要だ。
<成長見通し改善>
最新のECBスタッフ予想を含む新たな情報は、堅調な経済拡大ペースおよび成長見通しの著しい改善を示している。  
<資産購入プログラム>
見通しに陰りがみられたり、金融状況がインフレの持続的調整に向けた一段の進展にそぐわなくなった場合、資産買い入れプログラム(APP)の規模や期間を拡大する用意がある。
<金利は現在の水準にとどまる>
(金利は)長期にわたり、われわれの純資産買い入れの期間を大幅に超えて、現在の水準にとどまると引き続き予想している。

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