アングル:NZ新政権、総裁人事通じて中銀に改革要求か

アングル:NZ新政権、総裁人事通じて中銀に改革要求か
 11月3日、ニュージーランドで新たに発足した労働党政権は、ニュージーランド準備銀行(RBNZ、中銀)との政策目標協定(PTA)を見直し、物価に加えて雇用も金融政策の目標に据える方針だ。写真はRBNZ。ウェリントンで7月撮影(2017年 ロイター/David Gray)
[ウェリントン 3日 ロイター] - ニュージーランドで新たに発足した労働党政権は、ニュージーランド準備銀行(RBNZ、中銀)との政策目標協定(PTA)を見直し、物価に加えて雇用も金融政策の目標に据える方針だ。
ただ、政策目標の手直しは新政権の独自色を出すにはうってつけで、RBNZ総裁の後任選びを通じ、PTA見直しを待たずに中銀に改革を迫る可能性もある。
PTAの修正は法制面で長期にわたる手続きを伴う。一方、総裁の交代は新政権にとって金融政策の軌道修正を図るチャンスだ。
かつてRBNZの幹部だったマイケル・レッデル氏は「新政権の方針に沿った考え方の人物を次期総裁に据えれば、PTAに多くを盛り込むことができる」と指摘。総裁人事巡る政権の判断は、中銀改革に対する本気度を測る試金石になるとみている。
事情に詳しい筋によると、政府は少なくともRBNZの次期総裁を選ぶまでは現行のPTAを維持する見通し。
政府は中銀の政策目標をインフレと雇用の2本立てとするとともに、連立を組むニュージーランド・ファースト党の要請に応じて為替レートをPTAの優先項目と位置付けそうだ。ニュージーランド・ファースト党はニュージーランド(NZ)ドル相場を低めに誘導し、輸出の促進を図るよう求めている。
NZドルは総選挙後に5%以上下げており、ウェリントンのディーラーによると中銀改革を織り込む形でNZドルが売られたという。
<財務相の判断が鍵>
ニュージーランドの失業率は9年ぶりの低水準だが、それでも雇用創出が政治的に重要な課題であることに変わりはない。
ロバートソン財務相は、中銀の理事会の推薦に基づき、来年3月に次期総裁を指名する見通しで、その後政府と中銀がPTAの見直しで合意する必要がある。次期総裁選びは総選挙前から始まっている。
キャピタル・エコノミクスのオーストラリア・ニュージーランド担当首席エコノミスト、ポール・デールズ氏は、PTAを修正するよりもRBNZを雇用重視に向けさせる方が労働党政権にとって簡単だとみている。「中銀に雇用にもっと注意を向けるよう伝えるだけで、極めて迅速に事が運ぶ」と話す。
中銀の政策の方向性に最も大きく影響するのが次期総裁人事だというのがアナリストの見方。ロバートソン財務相は中銀理事会の推薦を拒否することが可能で、人選を一からやり直させ、新たな候補を推薦するよう求めることもできる。
それでも、理事会がバスカンド副総裁を推せば、財務相は推薦を受け入れ、事を荒立てることはないだろうとのがアナリストの見立てだ。
このほか総裁候補には公的年金基金、スーパーアニュエーション・ファンドのチーフエグゼクティブでRBNZの副総裁を務めた経験を持つエイドリアン・オア氏の名前が挙がっている。
(Ana Nicolaci da Costa記者、Charlotte Greenfield記者)

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