アングル:中国の債務は引き続き拡大、見えない政府の抑制効果

アングル:中国の債務は引き続き拡大、見えない政府の抑制効果
 11月24日、中国ではここ数年、政府高官らが債務の削減を政策の優先課題に掲げているが、これまでのところ目に見える成果は出ていない。5月撮影(2017年 ロイター/Thomas White)
[24日 ロイター] - 中国ではここ数年、政府高官らが債務の削減を政策の優先課題に掲げているが、これまでのところ目に見える成果は出ていない。逆に、ロイターの分析によると、中国企業が抱える債務は増え続けており、9月末現在の増加率はここ4年で最大だった。
中国の政策担当者らは、国有企業や地方政府を説得して借り入れを削減させ、規制を強化。銀行の短期の借り入れを監視するなど、債務の爆発的な伸びに歯止めをかけるためにさまざまな措置を打ち出したが、その間も債務の拡大は継続。
一部の推定によると、中国の総債務は経済規模の3倍に達している。
国際通貨基金(IMF)は昨年、中国の信用の伸びは世界的な標準から見て「非常に速い」と指摘した上で、包括的な戦略を講じて債務問題に対処しなければ、銀行危機が発生したり、経済成長が急減速したりするリスクがあるとの認識を示した。
中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁も10月、米国で「ミンスキー・モーメント」と呼ばれている概念に言及して資産価格急落リスクを警告。
企業の債務は比較的高水準で家計債務も急速に膨らみつつあると指摘し、人民銀は資産バブルの急激な調整によるリスクを制御し、地方政府の傘下機関による借り入れの問題に真剣に取り組むと表明した。
総裁はまた、債務を一段と管理可能な水準に引き下げるためには時間がかかることを認めた。
ロイターの分析によると、中国上場企業2146社の9月末時点の債務は前年同期から23%増加した。これは2013年以来の高水準。
分析対象には、中国上場企業の5分の3が含まれるが、政府の規制の矢面に立ってきた金融機関は含まれていない。
分析によると、過去5年間の債務の伸びが最も大きかったのは不動産部門。次が工業部門だった。
工業部門が総債務に占める割合は2012年末から3%ポイント上昇。不動産部門が占める割合は7%ポイント上昇した。
国有企業(SOEs)の9月末時点の債務も伸び率が加速。CSIの上場国有企業100銘柄で構成する株価指数<.CSI000927>の75社の総債務(金融機関は除く)は前年同期から27%超増加した。伸び率はここ数年で最高だった。
債務返済コストも過去数四半期に国有企業の収入の約4分の1にまで上昇し、問題の規模の大きさを浮き彫りにした。現在および将来の成長の足かせとなることも示唆している。
収入に占める比率は今年第2・四半期には約27%に上昇し、少なくとも5年ぶりの高水準をつけた。ただ、第3・四半期には収入の急増を背景に24.47%へ小幅低下した。
企業債務を詳細に見てみると、債券発行を通じた借り入れは減少していることが分かる。しかし、規制当局の取り締まりで借り入れコストが上昇している可能性がある。
人民銀行のデータによると、10月末時点の社債残高は18兆3400億元(2兆7700億ドル)で、前年同期比4.4%増加した。増加率はここ2年で最低の水準だった。
資金需要のギャップは、中国のシャド―バンキング(影の銀行)セクターのバランスシート外の資金調達で賄われているもよう。
シャド―バンキングも含めた10月末時点の中国の社会融資総量残高は172兆2100億元で、前年比13%増加した。ただ、シャド―バンキングの正確な規模は分かっていない。
10月の中国社会融資総量は1兆0400億元(1565億4000万ドル)で、9月の1兆8200億元から減少した。
10月下旬の第19回共産党大会以降、デレバレッジに向けた中国の取り組みも強化されたもようだ。
人民銀行は11月17日、金融機関の資産運用業務に関する規制強化に向け、指針案を明らかにした。
中国政府の債務は引き続き抑制されており、国際決済銀行(BIS)の最新データによると、国内総生産(GDP)の46.9%にとどまっている。
しかし、政策当局者らは最近、家計債務の急拡大に対する警戒感を強めている。
人民銀行が10月に公表した報告書によると、9月末時点の家計の消費者ローン残高(人民元と海外通貨の合計)は前年同月末比29.1%増の30兆2000億元だった。
9月末時点の人民元建て不動産融資残高は前年同月末比22.8%増の31兆1000億元。個人向け住宅ローン残高は26.2%増の21兆1000億元だった。

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