コラム:石油・ガス銘柄を除外、ノルウェー基金が鳴らす警鐘
Lauren Silva Laughlin
[ダラス 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 運用資産1兆ドルと世界最大の政府系ファンド(SWF)であるノルウェー政府年金基金が、石油・ガス関連株への投資を取りやめる方針を打ち出した。
化石燃料に依存するノルウェーが運用資産の分散化を図るのは理に適っているが、石油メジャーにとっては低炭素社会の到来に向けた備えを強化するよう警鐘が鳴らされた格好だ。
ノルウェー政府年金基金は政府の石油・ガス収入を財源としている上、同国政府は世界最大級の石油会社スタトイルの株式3分2を保有している。石油・ガス関連株の処分は、基金を監督するノルウェー中銀が提案していたもので、同国が受ける油価変動の影響を抑える賢い手法だ。
ノルウェー中銀によると、今回の提案は石油・ガス価格の見通しや同セクターの収益性についての見方を反映したものではない。ただ中銀は、原油価格が下落する中、石油株のリターンが市場平均を大きく下回っている点は明記した。S&P総合500種のエネルギーセクターは過去3年間、総合500種を毎年15%ポイント程度アンダーパフォームしており、こうした流れは続くかもしれない。中銀の提案を議会が承認すれば、石油・ガス関連株370億ドル相当が売却される。
ノルウェーは石油関連資産について長期的な見通しも持っている。1990年の同基金設立時に同国は石油生産の頭打ちを念頭に置いていた。政府はウェブサイトで「いつの日にか石油は枯渇するが、基金のリターンが国民に恩恵を与え続けるだろう」と記している。
大手投資家の間では石油産業の持続性に対する懸念が広まりつつある。スウェーデンのAP4など欧州の年金基金はポートフォリオ戦略に気候変動の問題を取り入れ、具体的な低炭素関連の投資を行っている。米国の機関投資家の多くは投資の見直しに消極的だが、最近はエクソンモービルに対して厳しい姿勢を取り、気候変動のリスクについて研究するよう迫るといったことも起きている。
こうした動きにより、大手石油会社は独自の経営モデルの採用を迫られている。ウッド・マッケンジーによると、石油メジャーは再生可能エネルギーの台頭に対応するため、風力・太陽光発電事業に投資する必要があり、石油・ガス市場と同じく12%のシェアを確保すると想定した場合、その額は2035年までに3500億ドルに達する。
エクソン・モービルのクリーンエネルギー事業への投資は2月までの過去15年間の累計が70億ドルにすぎない。ノルウェー政府年金基金の動きは、この分野への投資を拡大すべきときが訪れたことを示している。
●背景となるニュース
*ノルウェーの政府系ファンド(SWF)であるノルウェー政府年金基金は16日、財務省に書簡を送り、指標となる指数から石油・ガス銘柄を除外するよう提案した。最終的には同セクターへの投資を完全に停止する。基金を監督するノルウェー中銀は今回の提案について、石油・ガスの今後の価格動向に対する具体的な見通しや同セクターの収益性・持続可能性ではなく、ノルウェー政府が保有する石油・ガス資産全体を考えた、と説明した。
*石油・ガス銘柄が指数に占める比率は約6%。ロイターによると、財務省が合意し、議会の承認が得られれば、基金は石油・ガス銘柄370億ドル相当前後を処分する。
*基金はノルウェーの石油・ガス関連収入を財源とする。同国政府は国営石油会社スタトイルの3分2の株式も保有する。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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