北朝鮮、8月中旬までにグアム攻撃案策定へ 米大統領の警告一蹴

北朝鮮、8月中旬までにグアム攻撃案策定へ 米大統領の警告を一蹴
 8月9日、北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は、北朝鮮が中距離弾道ミサイル4発を米領グアムに向けて発射する計画を8月中旬までに策定すると伝えた。提供写真は7月撮影(2017年 ロイター/KCNA)
[ソウル/グアム 10日 ロイター] - 北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は、北朝鮮が中距離弾道ミサイル4発を米領グアムに向けて発射する計画を8月中旬までに策定すると伝えた。
KCNAは、トランプ米大統領が8日、北朝鮮がこれ以上米国を脅かせば「世界がかつて見たことのないような炎と怒りに直面する」と発言したことは「全く無意味」として一蹴。
「このように理性を欠いた人物との健全な対話は不可能であり、同氏には絶対的な力のみが有効だ」とし、米国の言動を引き続き注視する方針を明らかにした。
北朝鮮は8月中旬までにグアム攻撃計画をまとめた上で金正恩朝鮮労働党委員長に提示し、実行に移すかどうか委員長の判断を待つ方針。
KCNAによると、朝鮮人民軍の金絡謙戦略軍司令官は「朝鮮人民軍が発射する『火星12』は日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過する」と発言。ミサイルは「グアム沖30─40キロの海域に着弾する」とした。
共同通信によると、小野寺五典防衛相は10日の衆院安全保障委員会で、北朝鮮がグアムに向けてミサイルを発射した場合、存立危機事態として法律に基づき迎撃することが可能だとの認識を示した。
ただ専門家は、グアムに向かって領空を通過するミサイルを迎撃する能力を日本は現時点で保有していないと指摘する。
専門家はさらに、北朝鮮が詳細に言及したことを踏まえると、決断力のない弱い体制と見なされることを避けるために計画を実行する可能性が高いとの見方を示した。
グアムのカルボ知事は、北朝鮮の脅威は高まっていないとしている。「北朝鮮はこれまで、予測不可能であることを好み、不意打ちでミサイルを発射していた」と指摘。「ところが、今回は事前に知らせている。これは、誤解を避けたいからであり、北朝鮮側の不安心理を反映している」と述べた。
米国と北朝鮮の激しい応酬を受け、世界の金融市場が動揺。9日は世界的に株安となり、リスク資産を回避する動きが強まった。代わりに金や米国債など安全資産が買われた。
米国のマティス国防長官は9日、北朝鮮は「体制の終えん」につながるいかなる行動も中止し、核兵器の追求を放棄する必要があるとの考えを示した。
長官は、米国は北朝鮮が示す行動と同様の行動をとるとし、北朝鮮は自国が仕掛けた軍拡競争や紛争で敗北を喫することになると警告。米国務省は外交努力を進めているとしながらも、米国、およびその同盟国は「世界で最も正確で堅固な防衛・攻撃能力を有している」とした。
一方、トランプ大統領は9日、前日の「炎と怒り」発言に補足する格好で、「私が米大統領として一番に下した命令は、米国の核兵器備蓄の刷新および近代化だった。(米国の核能力は)かつてないほどに増強された」とツイッターに投稿。「この威力を使う必要がないことを願うが、米国が世界最強の国でなくなる時は決して来ない」と強調した。
米政権の北朝鮮問題担当者は9日、ロイターの取材に匿名を条件に応じ、トランプ大統領の「炎と怒り」発言について「計画された発言ではなく、自発的なもの」との見解を示した。
同当局者は「北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の発言などに対応してレトリックをエスカレートさせることは検討されていなかった」と述べ、トランプ大統領が発言の文言について事前に側近と打ち合わせていなかったことを明らかにした。
一方、ホワイトハウスは、ジョン・ケリー大統領首席補佐官のほか、国家経済会議(NEC)のメンバーは、トランプ氏の発言について「発言前から全般的なトーンについて認識していた」と説明。
サンダース報道官は大統領の休暇先のニュージャージー州で、「トランプ氏は自身の言葉で語ったが、メッセージのトーンと強さについては事前に協議されていた」と述べた。
中国共産党機関紙「人民日報」系の環球時報は10日、ウェブサイトに掲載した社説で、「北朝鮮は外の世界からほぼ完全に孤立してきた。こうした極端な状況では、同国はあらゆる選択肢を検討することになる」とし、「米国政府は北朝鮮が外の世界との対話と国際社会への復帰を望むよう促す必要がある」と強調した。
*内容を追加しました。

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