WD、東芝メモリに役員派遣せず 将来も3分の1超の議決権持たず

WD、東芝メモリに役員派遣せず 将来も3分の1超の議決権持たず
 8月25日、産業革新機構などが参加する日米企業連合による東芝の半導体子会社「東芝メモリ(TMC)」の買収計画で、米ウエスタンデジタル(WD)がTMCに役員を派遣しないことで調整していることがわかった。写真はカリフォルニア州アーバインにあるWDの社屋。1月撮影(2017年 ロイター/Mike Blake/File Photo)
[東京 25日 ロイター] - 産業革新機構などが参加する日米企業連合による東芝<6502.T>の半導体子会社「東芝メモリ(TMC)」の買収計画で、米ウエスタンデジタル(WD)がTMCに役員を派遣しないことで調整していることがわかった。
買収後の出口戦略で有力視されているTMCの株式上場後も、WDは重要事項に対する拒否権を得る3分の1超の議決権を持たない意向を示しているという。複数の関係筋が25日に明らかにした。
WDのスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)が近く来日し、東芝の綱川智社長と会談する予定。東芝は31日にも取締役会を開き、WDと革新機構に日本政策投資銀行、米系ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)を加えた日米連合へのTMC売却を正式に決める。
東芝とWDはTMCの売却を巡り対立し、法廷闘争に発展した。ただ、来年3月末までにTMCの売却を完了し債務超過の解消を迫られている東芝と、東芝との関係悪化が決定的になった場合のマイナスの影響が大きいWDがともに譲歩。東芝は24日に社内外の取締役が集まった経営会議で、WDが加わる日米連合と優先的に交渉することを確認した。
一時は先鋭的に対立した両社だが、東芝関係者によると、経済産業省の幹部がWDとの交渉に加わり、東芝の一部で高まっていたWDへの「主戦論」を退けるためにも、WD側からの譲歩を引き出したという。
結果的に、WDはTMCに役員を派遣しないことで関与の度合いを薄めるとともに、「3年後をめどに目指すTMCの上場」(東芝関係者)の際にも、WDは議決権比率を、3分の1を超える範囲では持たない意向を示しているという。
日本勢で唯一、半導体世界トップ10のランキングに顔を出す東芝の半導体事業について、経産省は今後も「日本資本」を維持したいという意向が強い。
TMCの上場の際にも「日本勢が半分以上の資本を持つ」(同関係者)ことを前提に、革新機構と政投銀を通じて政府系の資金を投入する「大義名分」を打ち出す方針だという。
東芝幹部も、TMC上場について「準備を始めた」と認めている。3年後にTMCを上場する際には、東芝の経営状況の改善も見込み、引き続き一定程度、TMCに関与することを想定しているもようだ。
WDは、この件について「ノーコメント」(広報担当)としている。

浜田健太郎、山崎牧子 編集:田巻一彦

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