コラム:マカオのカジノ王ホー氏死去、公私ともに勝ち続けた人生

コラム:「マカオのカジノ王」ホー氏死去、勝ち続けた人生の秘訣
 「マカオのカジノ王」として知られる実業家のスタンレー・ホー氏が98歳で死去した。写真は2006年11月、同氏の85歳の誕生日イベントにて(2020年 ロイター/Bobby Yip)
Richard Beales
[ニューヨーク 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 「マカオのカジノ王」として知られる実業家のスタンレー・ホー氏が98歳で死去した。自身だけでなく、そのカジノ帝国も長寿の象徴となった。旗艦企業、SJMホールディングス<0880.HK>は政治リスク、一族の内紛、同業者との厳しい競争をくぐり抜けて生き残っている。
ホー氏の帝国は、何度倒れてもおかしくなかった。香港英字紙、サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、マカオがポルトガル植民地だった時代には独占企業として税収の半分に寄与していたが、その後はカジノ市場開放との格闘を迫られた。マカオのカジノ産業は2000年半ばに世界最大となったが、その代償としてラスベガスのカジノ王、スティーブ・ウィン氏やシェルドン・アデルソン氏といった商売敵が参入してきた。
ホー氏が会長退任を発表した18年、SJMの利益は減少傾向をたどっていた。そのころまでに、マカオでカジノを運営している上場企業は6社に増えており、その時点で過去5年間のトータルリターンがマイナスなのはSJMの株主だけという有様だった。しかし、その後にホー氏の娘デイジー氏が率いることになったSJMは、過去ほどの栄光こそ取り戻せていないものの、株価のパフォーマンスは6社の中で群を抜いて良好だ。
ホー氏は1999年、マカオの中国返還もうまく乗り切った。旧植民地統治の一部を具現していた人物にとって、これは政治手腕が求められただけでなく、中国本土からの富裕層顧客や、そうした顧客の招致を手配する業者「ジャンケット・オペレーター」を巧みに扱う必要があった。
ホー氏の一族もまた、過去と現在のビジネスに重要な役割を果たした。香港サウスチャイナ紙によると、ホー氏は4人の女性との間に14人の子供がいた。これはホー氏の派手な人物像を浮かび上がらせると同時に、摩擦の種になるであろうことも想像に難くない。10年前には家族数人とのいさかいが法廷にまで持ち込まれたが、事業への影響は軽微だった。家族は現在、SJMと、もう1つの同族経営である香港上場企業の信徳集団<0242.HK>を支えている。息子の1人、ローレンス氏は自らメルコリゾーツ&エンターテインメントというカジノ帝国を築き上げた。
SJMと信徳集団の株価は26日、急上昇した。投資家は経営の自由度が上がると期待しているのかもしれないが、実際はホー氏の家父長たる影響はとっくに限られていた。ただ、投資家が少なくとも2社の潜在的な収益力に期待しているのは間違いない。ホー氏は賭けに勝ち続ける「すべ」をだれよりも心得ていたのだから。
●背景となるニュース
*「マカオのカジノ王」ことスタンレー・ホー氏が98歳で死去した。家族が26日に発表した。ホー氏は裸一貫からカジノ帝国を築き、アジア屈指の富豪となった。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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