コラム:近視眼経営にコロナが終止符、四半期見通し続々取りやめ

コラム:近視眼的経営に終止符か、新型コロナの「功名」に期待
 5月21日、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)という霧が功名となり、企業を率いる「機長」たちの視界がかえって開けるかもしれない。写真はロンドンの金融街。3月11日撮影(2020年 ロイター/Henry Nicholls)
Jeffrey Goldfarb
[香港 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)という霧が功名となり、企業を率いる「機長」たちの視界がかえって開けるかもしれない。
足もとの決算シーズンには、米アップルから豪銀マッコーリー、英通信大手ボーダフォンに至るまで、多くの企業が新型コロナを理由に業績見通しの発表を一切見合わせた。パンデミックをきっかけに四半期業績見通しを出す慣行に完全に終止符が打たれれば、申し分ないだろう。
ほとんどの人と同様、企業トップも今、視界の悪い中を手探りで進んでいる。気の毒なことに、エコノミストとアナリストは、死亡率や感染拡大の第2波の予測を、個人消費や住宅価格の算出モデルに組み込もうと格闘している。
しかし多くの企業幹部はこうした努力を放棄してしまった。米日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソンのジョゼフ・ウォーク最高財務責任者(CFO)は4月、通年業績見通しの発表に先立ってこう述べた。「一つだけ確信を持って言えるのは、かっきり100%の確率で、見通しは間違うだろうということだ」
調査会社ファクトセットによると、過去10年間、米S&P500種総合株価指数の構成企業中、約100社が四半期の1株当たり利益見通しを事前に発表し続けてきた。しかし今年4―6月期の見通しについては、発表する企業の割合が7%に減った。
この割合をゼロにすることを「予測目標」にすべきだ。自ら発表した予測値を実際の業績が上回ったり下回ったりするたびに、数十億ドル(数千億円)の投資利益や投資損失が発生する。英蘭系日用品大手ユニリーバのアラン・ジョープ最高経営責任者(CEO)は今月、まさにそうした認識を示した。同氏は「精度の悪さが常態になってしまった」ために業績見通しを見送ると述べた。
平常時でさえ、四半期の業績見通しは企業経営者と投資家の行動を誤らせることがある。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOとバークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットCEOは2018年、四半期見通し発表の慣行をやめようと呼び掛けるキャンペーンで、企業幹部には見通しと実績を合致させようとするために新規採用やIT更新支出を控えてしまうインセンティブが働くと指摘した。
コンサルティング会社KKSアドバイザーズが実施した2014年の調査では、四半期見通しを発表している企業の方が、通年の見通ししか発表していない企業に比べ、決算発表時の株価の変動率が大きいことが示された。ハーバード大経営大学院の調査によると、これは資本コストの上昇につながる可能性がある。
より重要なのは、本来であれば経営戦略の推進や、それをより深く説明することにもっと時間を割けるはずの経営者の仕事が、こうした「短期志向」によって邪魔されることだ。深い説明を受けた投資家は、より健全で長期的な銘柄に目を向けやすくなるだろう。うまくいけば、新型コロナウイルスが、この痛みに満ちた近視眼的経営を治すことになりそうだ。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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