焦点:中国の「くしゃみ」で風邪をひく欧州大企業

焦点:中国の「くしゃみ」で風邪をひく欧州大企業
 11月30日、米国貿易摩擦の影響で中国経済が「くしゃみ」をし始め、中国との関わりが大きい一部の欧州企業が「風邪」をひいている。写真は、中国の国旗とEU旗。北京で6月撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)
[ロンドン/ミラノ 30日 ロイター] - 米国貿易摩擦の影響で中国経済が「くしゃみ」をし始め、中国との関わりが大きい一部の欧州企業が「風邪」をひいている。1日の米中首脳会談は米国による対中追加関税率の引き上げ猶予で合意したが、今後も火種はくすぶる見通しで、多くの欧州大企業への影響は深刻なものになりそうだ。
ドイツの自動車大手BMWや、フランスの高級品大手エルメスの株価は、トランプ米政権の通商政策の犠牲となり、今年急落している。
独株価指数DAX<.GDAXi>を構成する企業の売上高のうち、中国市場から得ている比率は約6%で約800億ユーロに上る。このため、DAXは米中貿易戦争の影響を測る物差しとして使われることが多い。DAXは年初から12.5%下落し、中国関連の売上高が少ない汎欧州STOXX600指数と比べ、アンダーパフォームしている。
モルガン・スタンレーによると、BMWの今年の売上高に占める中国の比率は18%、フォルクスワーゲンは14%となる見通しだ。
ドイツと中国の2国間貿易は昨年、過去最大の1880億ユーロを記録した。しかし、その他の欧州諸国についても懸念は広がっている。
ロイターの委託でアルファセンスが実施した調査によると、今年7─9月期の決算発表で中国の景気減速に言及した欧州企業は49社と、前期の16社から3倍に増えた。
景気減速に限らず、何らかの形で中国に言及した企業数も361社から540社に増えている。
<最大の脅威>
バークレイズの欧州株ストラテジスト、エマニュエル・カウ氏は「欧州市場は新興国市場の減速の影響を非常に受けやすい」と指摘。欧州市場は予算を巡るイタリア政府と欧州連合(EU)との対立や、英国のEU離脱問題といった政治要因にも圧迫されており、なおさら厳しい情勢だとした。
オランダの資産運用会社NNインベストメンツのマルチ資産責任者Valentijn van Niewenhuisen氏は、米中貿易摩擦が「最大の脅威」だと述べ、今までは欧州株が来年回復すると見ていたが、再考が必要かもしれないと強調した。
<チャイナ・シンドローム>
伊高級ブランド、グッチの親会社である仏ケリングとスイス宝飾品大手リシュモンも、売上高の24%は中国市場向けだ。
ジェフリーズのアナリストチームは、中国経済の減速で欧州の高級品関連企業の株価が下落している現象を「逆チャイナ・シンドローム」と名付けた。米国の原子炉がメルトダウン事故を起こし、核燃料が地球を突きぬけて中国まで汚染する可能性に触れた1979年の映画の題名に基づく名称だ。
「2019年から、中国経済の急激な減速が高級品セクター全体を汚染し始める恐れがある」という。
ドイツのシーメンスやBASFなどの大手工業企業の株価も脅威にさらされている。
米資産運用会社ブランデス・インベストメント・パートナーズのディレクター、ルイーズ・サワーブロン氏は、ドイツの工業株には「非常に力強い中国での利益と、中国経済成長の継続が織り込まれているが、当社はこうした状況が持続可能とは思っていない」と指摘した。
(Julien Ponthus記者, Helen Reid記者 Danilo Masoni記者)

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