焦点:イタリアの銀行、資本不足と調達難のダブルパンチか

[ミラノ 4日 ロイター] - イタリア連立政権の放漫財政を嫌って同国の国債利回りが急上昇したことで、国内銀行が資本不足に陥る恐れが出てきた。来年には多額の債務借り換えも控えており、資金調達面の不安も高まっている。
国内銀行の総資産のうち10%は国債で、利回りが上昇すると影響は大きい。
イタリア銀は2011─12年のユーロ圏債務危機に際し、外国勢が処分した自国の国債を代わりに買い、銀行と国の「破滅のループ」に陥った。今年5、6月にイタリア資産が売り込まれた際にも同様の国債買いを強化した。
しかしアナリストによると、イタリア国債と安全なドイツ国債との利回り格差が拡大したことにより、銀行の中核的資本比率は第2・四半期に平均40ベーシスポイント(bp)低下し、第3・四半期にはさらに8bp下がった。
新政権の財政計画が初めて明らかになった5月半ば時点のイタリア国債とドイツ国債の利回り差は130bpだったが、政権が財政赤字拡大計画を示した今週には300bpを超えた。
イタリアのトレーダー業界団体アシオム・フォレックスのルイジ・ベルッティ氏は先週、これが400bpに達すれば一部の銀行は資本増強を迫られると指摘している。
<調達コストが上昇>
イタリア銀はここ数年、不良債権処理とコスト削減のために資本を調達し、リストラを進めてきた。しかし貸倒損失とマイナス金利政策によって収益が悪化し、自己資本利益率が資本コストを下回っている状態だ。
そして今、市場が荒れて調達コストが上昇している。
イタリア最強の銀行の1つであるインテーザ・サンパオロが3月に10年債を発行したときの利回りは1.83%だったが、3日時点の同債券の流通利回りは3.12%だ。
トレーダーによると、起債市場は再び閉鎖状態に陥っている。
この状況が長引けば、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナなど、ハイブリッド債を発行して資本増強する必要がある銀行にとって問題が生じる。
ただ、欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏の銀行に2400億ユーロの長期資金を低利で供給しているため、イタリアの銀行が直ちに流動性危機に陥る心配はない。
イタリア中央銀行によると、国内銀の流動性カバレッジ比率(LCR)は昨年末時点で平均171%と、バーゼル規制で義務付けられる100%を優に上回っている。
また取り付け騒ぎも起こっていないため純金利収入は容易に維持することができ、年末までは起債しなくてもやっていけるだろう。
<借り換え>
しかし来年になると、借り換えの問題が切迫してくる。
イタリアの銀行は来年半ばから、バーゼル規制におけるもう1つの流動性指標、安定調達比率(NSFR)の計算から2020年6月償還のローン債権1400億ユーロを除く必要が生じる。
また20年までには、今年2月時点の債券発行残高2670億ユーロの約半分が償還を迎え、借り換えなければならない。
さらには、新たな欧州連合(EU)の規則により、銀行は損失吸収能力のある証券の発行を義務付けられている。専門家によると、この規則は19年1月から段階的に施行されるが、来年円滑に発行を始めなければ基準の達成に苦労するかもしれない。
銀行は、イタリア国債とドイツ国債との利回り格差が開いた分の2割しか顧客に転嫁していないが、間もなく転嫁分を増やす必要に迫られるだろう。
(Valentina Za記者)

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