アングル:混乱か前進か、英離脱案の採決延期で予想される展開

アングル:混乱か前進か、ブレグジット採決延期で起き得る展開
12月11日、メイ英首相は、英国の欧州連合(EU)離脱案に関する議会の採決を延期した。ロンドンで撮影(2018年 ロイター/Simon Dawson)
[ロンドン 11日 ロイター] - メイ英首相は、英国の欧州連合(EU)離脱案に関する議会の採決を延期した。離脱案に極めて懐疑的な議員の賛成を取り付けるため、EU側から英国にとって安心できる材料をさらに得ようという狙いだ。英国は議会の承認がなければ、離脱協定を批准できない。
ブレグジット(英のEU離脱)は今後どうなるのだろうか。
●議会に投げ返されるボール
英政府は来年1月21日までに離脱案の採決を実施すると表明。ただ政権批判派は、彼らが欠陥を抱えているとみなす離脱案に対する意見を変えられるほどの要素を、メイ氏がEU首脳から引き出すのは無理だと口をそろえている。
法律に基づくと、採決を経て離脱案が否決されれば、内閣は21日以内に今後の方針を示す必要がある。政府は、議会の頭越しに「合意なき離脱」に向かうことができるとの見方を否定し、合意あり、なしいずれにせよ、次の手順について来年1月21日までに議会で議論する機会を設けると約束している。
●党首辞任
メイ氏が与党・保守党党首を辞任する可能性がある。そうなると総選挙にはならず、保守党の党首選が行われる。
●メイ降ろし
保守党内でずっと続く一部党員の「メイ降ろし」の動きが再び勢いを増してもおかしくない。315人の保守党議員のうち48人が党首辞任を求めれば、党首の信任投票が開催される。メイ氏が敗北するとやはり党首選になる。
●内閣不信任
野党・労働党は内閣不信任案を利用して、総選挙なしで政権を握れる可能性がある。議会で内閣不信任案が可決された場合、労働党は14日以内に過半数の支持を得て政権を樹立できると証明することが必要だ。
●総選挙
内閣不信任案が可決されても、労働党が新政権を樹立できないとすれば、総選挙が公示される。メイ氏は、議会の3分の2の賛成を得られるなら、自ら解散総選挙に打って出ることもできる。
もっともメイ氏はこれまで、総選挙は国益に合致しないと発言している。
<より長期のオプション>
●国民投票やり直し
EU離脱の是非を問う2回目の国民投票実現に至る道筋は不透明だが、時の政府の支持が不可欠であるのはほぼ間違いない。再投票は、議会で承認されない限り実施できない。
メイ氏は再投票に絶対反対である半面、労働党は断固推進ではないが完全に否定もしていない。だから実現するには首相交代、政権交代もしくは突然の政策変更が前提になる。
再投票で事態打開をするべきだとの声はさまざまな政治勢力の間で増えつつある。とはいえ今のところ、議会でそうした考えが多数派になったとは証明できない。
また議会が原則的に再投票を認めたとしても、英国はEUに離脱手続き期間の延長を要請しなければならなくなる。
●ブレグジットの延期か撤回
英政府が、より良い条件の合意に達するためや総選挙、国民投票やり直しなどの理由からEUに交渉期間延長を要請する事態はあり得る。
あるいは英政府はEUへの離脱通知を撤回するかもしれない。EU司法裁判所は今週、英国はEU諸国の同意なしで一方的に離脱通知を取り消せるとの判断を示した。
メイ氏自身は、EU離脱期日を遅らせることを望まず、離脱通知の撤回はしないと断言している。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab