アングル:「主戦場」は上院、トランプ氏弾劾の与野党攻防戦略

アングル:「主戦場」は上院、トランプ氏弾劾の与野党攻防戦略
12月6日、米民主党のペロシ下院議長は、トランプ大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾手続きで、正式に訴追の動きに入った。写真は7日、フロリダ州ハリウッドのイベントで登壇を終えたトランプ氏(2019年 ロイター/Loren Elliott)
[ワシントン 6日 ロイター] - 米民主党のペロシ下院議長は、トランプ大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾手続きで、正式に訴追の動きに入った。しかしトランプ氏側は民主党が過半数を占める下院での弾劾審議には応じず、与党・共和党が過半数を握る上院で弾劾裁判を受けて立つ意向を示した。
上院の弾劾裁判の手続きと共和党のマコネル上院院内総務の取り得る戦略をまとめた。
<上院の役割>
予想されている通りに下院本会議で弾劾決議案が可決された場合、上院で弾劾裁判が開かれる。トランプ氏には弁護士が付き、ロバーツ最高裁長官が手続きを監督する。
上院は下院の提出した証拠を審議し、トランプ氏が有罪かどうかを採決する。トランプ氏の罷免には出席議員の3分の2以上の賛成が必要。共和党は上院で過半数の議席を占めており、トランプ氏が有罪にされる可能性は極めて低い。
<トランプ氏は証人出廷を求めることができるか>
トランプ氏は、2020年大統領選の民主党有力候補バイデン前大統領と同氏の息子ハンター氏を証人に呼びたいとの考えを示した。トランプ氏は証拠を示さずに、バイデン氏とハンター氏が汚職に関与したと主張している。今年7月25日の電話会談でウクライナ大統領にバイデン氏とハンター氏を調査するよう圧力をかけたことが弾劾手続きの引き金となった。トランプ氏はウクライナ大統領との会話を正当化し、電話に問題はなく、不正はしていないとしている。
バイデン氏は弾劾裁判で自発的に証言するつもりはないと述べているが、召喚状を受け取った場合にどうするかは明確にしていない。
大統領の弁護士は歴史的に証人の証言を求めることが認められてきたが、上院で過半数以上の賛成を得る必要がある。
1999年の当時のクリントン大統領の弾劾裁判では、共和党が証人3人の出廷を要請したが、証言の生中継で裁判が間延びすることになるとして民主党が拒否。最終的に両党が非公開で証人に質問し、録画された証言の抜粋がその後、弾劾裁判の場で視聴された。
<マコネル院内総務の戦略>
共和党のマコネル上院院内総務は、下院が弾劾決議案を可決すれば上院で弾劾裁判を始め、民主党のシューマー上院院内総務と裁判のルールで協議を試みると公言している。
シューマー氏から同意を得られなければ、マコネル氏はこのルールを通すのに必要な51人の議員から賛成を取り付けようとするだろう。マコネル氏によると、議員51人の同意が得られない場合には、上院議員らの提出する一連の動議や提案を通じてルールが決まることになる。
クリントン氏の弾劾裁判ではこのルールが賛成100、反対0で超党派で可決された。決議には審議の時間運営、証人の要請、論証の提示の仕方などが含まれた。
<弾劾裁判はいつまで続くか>
いつまで続くか不透明だが、クリントン氏の弾劾裁判は5週間続き、クリントン氏の無罪放免で終了した。
下院民主党は来年の大統領選に向けて、民主・共和両党の支持が拮抗する選挙区での有権者獲得にワシントンの政治の駆け引きは逆効果との党内の懸念を受けて、弾劾手続きを急いだ。共和党は民主党の進め方は拙速と批判してきた経緯があり、上院でマコネル氏がどのようなペースで裁判を進めるかは不明。
弾劾裁判は大統領選の民主党有力候補であるサンダース上院議員やウォーレン上院議員の選挙戦を実質的に脇に追いやりかねず、バイデン氏も証言を求められれば同様のことになる。
トランプ氏は民主党の弾劾調査を使って支持者をたきつけ、選挙戦の資金集めにつなげている。同氏が正式な弾劾裁判入りを望むと公言しているところからは、同氏が上院での戦いの長期化に備えられるように見える。
<マコネル氏は早期幕引きが可能か>
クリントン氏の弾劾裁判で上院で採用されたルールは、大統領への告発を却下する動議を提出することを上院議員に認めた。今回もこうしたルールが決まって、動議が出され単純過半数で可決されることになれば、弾劾手続きは事実上終了する。
クリントン氏の弾劾裁判の最中、同氏に同情的な民主党議員が動議を提出したが、否決された。

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