ETFだけで日銀が債務超過になる水準を答えるのは適当ではない=日銀総裁

ETFだけで日銀が債務超過になる水準を答えるのは適当ではない=日銀総裁
 3月25日、日銀の黒田東彦総裁は、午後の参院予算委員会で、ETF(上場投資信託)だけを取り出して日銀が債務超過になる水準を答えるのは適当ではない、と述べた。写真は昨年10月に日銀本店で会見する同総裁(2019年 ロイター//Issei Kato)
[東京 25日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は25日、午後の参院予算委員会で、ETF(上場投資信託)だけを取り出して日銀が債務超過になる水準を答えるのは適当ではない、と述べた。藤巻健史委員(維希)の質問に答えた。
黒田総裁は保有しているETFについて「期末時点で時価が簿価を下回る場合は、引当金を計上する。決算上の期間損益は下押しされる」と述べた。ただ、日銀の損益は、国債の利息収入やETFの分配金の収益などいろいろな要因を組み合わせて全体として決まってくるとし「ETFの要因だけを取り出して、債務超過になる水準を答えるのは適当ではない」とした。
黒田総裁は、量的・質的金融緩和は、バランスシート拡大で収益が押し上げられる一方、出口時には、当座預金に対する付利金利引き上げによって収益が減少しやすいと指摘。ただ、経済・物価情勢が好転して付利金利を引き上げる場合には長期金利も相応に上昇するとし「当座預金に対する支払い利息が増える一方、保有国債はより高い利回りの国債に順次入れ替わるため、受け取り利息は増加する」と述べ「出口時の収益面への影響は、受け取り利息も含めたバランスシート全体で考える必要がある」とした。
また、15年度から、利息の受け払いで利益が上振れる局面では一部を積み立て、下振れる局面では取り崩すことのできる債券取引損失引当金の拡充を行ったことを説明し、「こうした措置は、出口に向けた収益の振れを平準化して、財務の健全性を確保する観点から一定の効果を持つ。事前の対応としては十分なものと認識している」と述べた。
黒田総裁は、日銀が保有する国債の残存期間は7年強だと述べ、景気が回復し、物価が上がる中での長期金利は「なだらかな形で金利が上がる時には、金利の高い国債に乗り換えていく。付利が引き上げられても、両面をみていかなければならない」と繰り返した。
また、保有国債は償却原価法を採用しており「長期金利が上昇して、国債価格が下落しても、決算上の期間損益で評価損失が計上されることはない。大きな問題が生じることはない」とした。
*内容を追加しました。

清水律子

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab