コラム:中国の経済減速、大胆な刺激策は当面見送りか

コラム:中国の経済減速、大胆な刺激策は当面見送りか
 1月21日、中国の第4・四半期国内総生産(GDP)は前年比6.4%増と、第3・四半期の6.5%から伸びが鈍化した。写真は上海で2018年11月撮影(2019年 ロイター/Aly Song)
Christopher Beddor
[香港 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の第4・四半期国内総生産(GDP)は前年比6.4%増と、第3・四半期の6.5%から伸びが鈍化した。
成長率は中国政府の想定以上に鈍化しているが、市場や一部の中国官僚が求めている大胆な金融・財政措置を打ち出すほど急激な減速とはなっていないがめ、大胆な刺激策はまだ先の話になりそうだ。
2018年の成長率は6.6%と、政府目標の6.5%前後に概ね沿った結果となった。ただ、成長率では表せない深刻な懸念もある。例えば、米国との全面的な貿易戦争や国内消費の部分的な弱さが原因で中国株式市場の価値は昨年、約4分の1が失われた。また、貿易戦争を受けて成長率の下振れ懸念も台頭した。
これまでの政策対応は驚くほど生ぬるかった。
エコノミストの多くは景気減速が、かつての融資に支えられた投資熱の再燃に道を開くと期待していた。国務院(内閣に相当)が7月に一段と積極的な財政政策を推し進める方針を表明した際は、そのような方向性が示されたかのように見えた。政府はそれ以降、減税策を拡大し、インフラ事業の承認を加速し、銀行の預金準備率を引き下げてきた。
ただ、順調に成果が出ているとの明確な兆しは乏しい。キャピタル・エコノミクスが公表している広範な融資の指標では、12月の伸び率は9.8%と、10年余りぶりの低い伸びとなった。GDPと同時に発表された公式統計によると、2018年の固定資産投資は前年比5.9%増と、少なくとも1996年以来の低い伸びとなった。
当局の対応には矛盾もみられる。17年から進めてきた債務削減の取り組みは確実に続いており、成長支援を求める声とは相容れない。例えば、中央政府は地方政府に対し、公共事業の費用を調達するのに資本市場を一段と活用するよう要請してきた。また、財政省は昨年打ち出した2000億ドル規模の減税に続く追加策を約束したが、同時に財政赤字目標は予想よりも厳格なGDP比2.8%に設定する可能性がある。
総括すれば、刺激策は過去の対応策よりも成果が出にくく、複雑になっている。
当局者らは上層部からより明確な指示があるまで、成長率と市場の押し上げに向けた一段と積極的な財政出動策は見送る公算が大きい。大胆な措置に踏み切るにはかなりの成長鈍化が必要になるだろう。当面は行動よりも口先での対応が大きな比重を占めると見込むべきだ。
●背景となるニュース
・中国国家統計局が21日発表した第4・四半期GDPは前年比6.4%増と、第3・四半期の6.5%から伸びが鈍化し、2009年第1・四半期以来の低さとなった。[nL3N1ZL1GA]
・中国人民銀行(中央銀行)が15日公表した12月の新規人民元建て融資は1兆0800億元(1600億ドル)とロイターがまとめたアナリスト予想の8000億元を大幅に上回った。[nL3N1ZF30S]
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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