自動車株安が日本にも波及、米中摩擦より25%関税を警戒

自動車株安が日本にも波及、米中摩擦より25%関税を警戒
 6月22日、世界的な自動車株安が日本にも波及した。独ダイムラーによる業績予想の下方修正をきっかけに、先進国の自動車株に売りが広がっており、同日の東京市場ではトヨタ自動車などが大幅安となった。写真は横浜港から輸出される新車。2017年11月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 22日 ロイター] - 世界的な自動車株安が日本にも波及した。独ダイムラーによる業績予想の下方修正をきっかけに、先進国の自動車株に売りが広がっており、22日の東京市場ではトヨタ自動車<7203.T>などが大幅安となった。米中貿易摩擦の影響よりも、米国が日本の自動車に25%の関税を課した場合のインパクトが警戒されている。
<ダイムラーショック>
ダイムラーは20日、今年の利払い・税引き前利益(EBIT)が昨年をやや下回るとの見通しを示した。同社は米アラバマ州の工場でスポーツタイプ多目的車(SUV)を生産、中国を含めた世界各地に輸出しているが、中国が米国への対抗措置として米国からの輸入車に関税をかけることになったことから影響が出ると見込んでいる。
市場は「米中貿易摩擦が、企業業績など実体経済に悪影響を及ぼし始めた」(国内証券)と警戒。欧州メーカーだけでなく、米株市場でもフォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)、テスラなどが大きく下落した。
22日の東京株式市場でも、業種別指数で値下がり1位は輸送用機器<.ITEQP.T>の1.58%。日産自動車<7201.T>は0.05%安にとどまったが、トヨタが2.66%、ホンダ<7267.T>が1.97%と大きく下落した。
<500億ドルなら軽傷>
もっとも、日本車株の下げは「行き過ぎ」(別の国内証券)との指摘もある。米中がこれまでに示してきた関税方針では、企業業績への悪影響は限られると見込まれるためだ。
米国による中国からの輸入品500億ドルへの関税引き上げでは、自動車関連は対象となっていない。中国が報復関税として、米国産自動車の輸入に関税をかける方針が伝わっているが「日本車メーカーの場合、中国に輸出する米国産自動車の数量は限られており、インパクトは限定的」(大和総研・エコノミストの小林俊介氏)との見方が出ている。
むしろ、5月に中国が打ち出した関税引き下げによる恩恵が、自動車業界に900億円程度ポジティブに作用し「漁夫の利」になると小林氏は試算している。
<25%関税なら日本経済に大ダメージ>
しかし、トランプ米大統領が自動車に対し、25%の関税を課す事態になれば、話は別だ。
トランプ大統領は5月23日に自動車・部品の輸入に関して、1962年通商拡大法232条に基づく調査に着手するよう指示。現在、乗用車にかけられている2.5%の関税が最大25%に引き上げる可能性もあるとみられている。
日本の自動車メーカーは、日本から米国への輸出だけでなく、カナダやメキシコなど米国以外の第三国からも、米国に輸出している。
小林氏の推計では、日本から米国への輸出は部品を合わせて5.5兆円、第三国から米国への乗用車輸出は約4兆円に達し、これらにも25%の関税が課せられるとすれば、インパクトは2.2兆円に膨れ上がる。
関税は輸入者が負担するうえ、価格転嫁もあり得るため、全てが日本車メーカーにのしかかるわけではないとしても、企業業績の重しとなることは避けられそうにない。
<最悪ケースなら成長率が半分に>
また、日本の自動車産業は裾野が広く、設備投資などへの影響を含め経済全体へのインパクトが大きい。
経済産業省の2014年産業連関表によると、自動車メーカーの需要が1単位減少すると、全産業の生産は約3.2単位減少する。
25%の関税分がすべて米国での小売価格に上乗せされれば、米国での販売数量減少は必至。そこで自動車メーカーが米国での現地生産拡大という形で対応すれば、中間財や設備投資の減少を通じて日本経済への影響度はさらに大きくなる。
シティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏は「自動車メーカーによる生産シフトが本格化する場合、GDP(国内総生産)は最大0.5%ポイント押し下げられる」と試算。日本の潜在成長率を1%とすれば半分が失われるとみている。

平田紀之 編集:伊賀大記

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