ドル上昇、対メキシコ関税発動回避で=NY市場

[ニューヨーク 10日 ロイター] - ニューヨーク外為市場では、トランプ米大統領が前週末に対メキシコ関税措置の発動見送りを決定したことを受けドルが上昇した。一方ユーロは、景気が減速すれば欧州中央銀行(ECB)は利下げを排除しない考えと関係筋の話で伝わったことで下落した。
トランプ大統領は7日、不法移民対策を巡りメキシコと合意したことを明らかにし、メキシコ製品への制裁関税発動を無期限で停止すると表明した。メキシコが不法移民対策を強化することで合意し、米・メキシコの「関税戦争」はひとまず回避された。
ウエストパック・バンキング(ニューヨーク)の外為部門責任者、リチャード・フラヌロビッチ氏は「対メキシコ関税回避の報道がオーバーナイトの取引でドルが大きく反発する要因となった」と述べた。
ドルは前週、貿易戦争で世界経済が阻害されるとの懸念から軟化。7日に発表された5月の雇用統計が軟調で、米利下げ観測が高まったこともドルの押し下げ要因となっていた。一方、この日発表の4月の求人労働移動調査(JOLTS)は、求人件数(季節調整済み)が740万件と3月の750万件からやや減少したものの、採用件数が過去最高水準に増加した。
米中貿易戦争のほか、トランプ米政権が日本や欧州などに対しても関税を発動させる可能性があるとの懸念からリスク選好度が低下した状態が続くと予想されている。
フラヌロビッチ氏は「中国との問題は解決されておらず、中国のほかにトランプ氏のターゲットになる可能性のある国は多い」と指摘。「市場は神経質になっており、こうしたことは市場心理に対する向かい風になる」と語った。
ユーロは下落。関係筋2人が、年内に経済成長が鈍化し、ユーロ高が世界貿易戦争の影響を既に受けている欧州に打撃を与えれば、ECB政策当局者は政策金利を一段と引き下げる可能性を排除しないと明らかにしたことが売り要因となった。
ECBは6日の理事会で、予想通り主要政策金利を据え置くとともに、少なくとも来年半ばまで金利を据え置く方針を決定。これを受けユーロは前週上昇していた。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab