米FRB、関税措置で減税の恩恵相殺なら利上げペース鈍化も=アトランタ連銀総裁

[フォートローダーデール(米フロリダ州) 7日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は7日、トランプ大統領が発動の方針を示した関税措置、およびこれに対する各国の対抗措置により米減税措置の成長押し上げ効果が相殺されれば、連邦準備理事会(FRB)は利上げペースを鈍化させる必要が出てくる可能性があるとの考えを示した。
同総裁は、減税措置によりFRBの経済成長見通しが押し上げられ、FRBは「より積極的な政策」に向かっていたと指摘。ただ「貿易を巡る事案は別の方向への先行き不透明性となっている」とし、上向きの先行き不透明性が、貿易を巡る先行き不透明性によりどの程度完全に相殺されるのか、もしくはFRBが見通しを変更しなくてはならないのかは分からないとの考えを示した。
また、国家経済会議(NEC)のコーン委員長の辞任による影響は出るとし、米政権の今後の経済政策の先行きは不透明になるとの見方を示した。
FRBの金融政策については、当初は今年は2回の利上げが実施されると予想していたが、財政刺激策を踏まえ、年内の利上げ回数は3回になると考えを変えたことも明らかにした。
FRBは今年は3回の利上げを実施するとみられており、1回目の利上げは今月の連邦公開市場委員会(FOMC)で決定されるとの見方が大勢となっている。
今月のFOMC後には最新の経済見通しが公表されるが、前回の見通しが公表された昨年12月以降、総額1兆5000億ドルの減税措置などが発表された一方、景気回復を揺るがしかねない世界貿易を巡る緊張が高まるなど、経済を巡る状況は大きく変化した。
こうしたなか、ボスティック総裁はFRB当局者として初めて、貿易問題が世界経済に影響を及ぼし、それによりFRBが利上げペースを鈍化させる可能性があると示唆。パウエル議長らFRB当局者はこれまで、一般的に保護主義に反対する姿勢を示しながらも、見通しを変えるまでには至っていなかった。
ボスティック総裁はトランプ氏が発動させるとしている鉄鋼とアルミニウムに対する輸入関税について「様子を見たい」との姿勢を示しながらも、貿易戦争のリスクのほか、コーンNEC委員長の辞任を受けたトランプ政権の経済政策の先行き不透明性などに言及。「米国は問題はアルミニウムと鉄鋼であると認識しているが、欧州はアルミと鉄鋼以外の物品に対し対抗措置を講じる構えを示している。先行き不透明性は何が対抗措置の対象になるのかだけではない。国際貿易に関与している人なら誰でも懸念を持つだろう」と述べた。
また、株式相場はトランプ氏の大統領当選を受け、ファンダメンタルズからかい離して大きく上昇したと指摘。世界的な貿易を巡る波乱要因が市場を現実に引き戻すきっかけになる可能性もあるとの見方を示した。
ボスティック総裁は今年のFOMCで投票権を持っている。
*内容を追加して再送します。

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