金融機関のマネロン対策不十分なら立入検査も=金融庁総括審議官

金融機関のマネロン対策不十分なら立入検査も=金融庁総括審議官
 3月7日、金融庁の佐々木清隆総括審議官は、トムソン・ロイターの「金融規制ジャパンサミット2018」で講演し、金融機関のマネーロンダリング(資金洗浄)・テロ資金供与防止に向けた対策が不十分なら、立ち入り検査を含めて検証すると述べた。写真は都内で2013年2月撮影(2018年 ロイター/Shohei Miyano)
[東京 7日 ロイター] - 金融庁の佐々木清隆総括審議官は7日、トムソン・ロイターの「金融規制ジャパンサミット2018」で講演し、金融機関のマネーロンダリング(資金洗浄)・テロ資金供与防止に向けた対策が不十分なら、立ち入り検査を含めて検証すると述べた。体制や警戒感の低い金融機関が、意図せずマネロンやテロ資金供与に加担してしまうリスクが高まっているとして、経営陣が主体的に関与して営業の最前線まで対策を浸透させるよう求めた。
マネロン対策などの国際協力を進める政府間会合、FATF(金融活動作業部会)による対日相互審査が2019年に行われるのを前に、金融庁は昨年12月、金融機関向けのガイドラインを作成。金融機関に対し、ガイドラインで求められている事項と現状の取り組みのギャップを自己分析し、ギャップを埋めるための対応策を策定するよう求めている。
佐々木総括審議官は「(マネロンやテロ資金供与の)リスクは世界的にますます増大している。一方、金融機関の対応はあまり進んでいない」と指摘。リスクと金融機関の対応の格差を早期に埋めるため、金融機関が示した「ギャップ分析の結果や改善策について、立ち入り検査を含めてより深度ある検証をする必要がある」と述べた。
<金融機関の取り組みに「失望」>
金融庁が作成したマネロン対策のガイドラインでは、営業部門、コンプラ部門、内部監査部門の3つの部門をマネロン・テロ資金供与の「防衛線」とすることが盛り込まれている。
佐々木氏は、3つの中でも営業部門が最も大事だとの見方を示した。「ビジネス部門が顧客に対峙する。ビジネス部門にいかに、AML(マネロン防止)・CFT(テロ資金供与防止)の精神を落とし込むか、経営陣が主導して行うべきだ」と述べた。
佐々木氏は、財務省、国際通貨基金(IMF)などで金融機関や事業会社のマネロン対策を議論してきた。しかし、各社の取り組みは10年前と変わらず、コンプラ部門任せで経営陣の主体的な関与がなく、「非常にディスアポインティドだ」と述べた。
仮想通貨取引所・コインチェックからの仮想通貨流出を受け、金融庁は仮想通貨取引所の立入検査を進めている。佐々木総括審議官は「新しい分野ほど、リスクへの感度が低い一方でリスクは高い」と話し、仮想通貨業界のマネロン対策の底上げが必要だとした。

和田崇彦

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab