欧州市場サマリー(21日)

[21日 ロイター] - <ロンドン株式市場> 反発して取引を終えた。過去最高値を更新した。米中貿易戦争に対する懸念が後退したほか、ポンドがドルに対して値下がりしたことで国際的に事業を展開しドルで収益を上げる銘柄が上昇した。
中型株で構成するFTSE250種も過去最高値をつけた。
ムニューシン米財務長官が米中貿易戦争をいったん「保留」にすると発言したことで原油が値上がりし、石油大手のロイヤル・ダッチ・シェルやBPなどのエネルギー銘柄が買われた。
金融株も好調だった。銀行大手バークレイズとHSBC、保険大手プルーデンシャルは0.7%から1.1%上昇。JPモルガン・アセット・マネジメントの株式ポートフォリオ・マネージャー、ジェイムズ・イルスリー氏は「世界経済は引き続き好調だ。景気へのエクスポージャーを踏まえ、一部の銀行や保険の金融株はオーバーウェートだ」と述べる。
欧州格安航空会社(LCC)最大手ライアンエアは5.1%上昇した。序盤は3%安となる局面もあったが、終盤にかけて持ち直した。決算発表で燃油や人員コストの上昇が次年度の利益に打撃を与えるとしたことが売り材料となった後、投資家らは17/18年度の利益が過去最高水準となったことに重点を置いたもようだ。
<欧州株式市場> まちまちで取引を終えた。米中貿易戦争をめぐる懸念が後退したことでドルが上昇し、輸出銘柄が値上がりした一方、イタリアでは連立政権樹立に向けた展開が不安視されており、株価が低迷した。
米国と中国が報復関税の応酬を止めることで合意し、ムニューシン米財務長官は「貿易戦争を当面保留する」と明言した。これを受けドルが5カ月ぶりの高値をつけた。
ドイツなど一部の株式市場は聖霊降臨祭の月曜日の祝日で休場だったため薄商いだった。こうした中、イタリアの主要株価FTSE・MIB指数は1.52%低下。ポピュリズム(大衆迎合主義)政党「五つ星運動」と反移民を掲げる右派「同盟」が連立政権樹立に向けた政策で合意し、大統領に対して首相候補を推薦することとなった。五つ星と同盟の政策内容は歳出拡大が含まれており、金融市場の不安要素となっている。
<ユーロ圏債券> イタリア国債利回りが急伸。同国の極右政党「同盟」と大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」が連立政権樹立に向けた政策で合意でする中、市場では財政支出拡を巡る懸念が強まっている。同国の主要株価指数も6週間ぶり安値に沈んだ。
イタリア2年債利回りは19ベーシスポイント(bp)上昇の0.27%と、2016年12月以来の高水準。1週間前にはマイナス0.11%近辺で推移していた。
10年物のイタリア国債とスペイン国債の利回り格差は2012年以来の水準となる82bpに拡大。4月末時点では50bp近辺だった。
指標の独10年債との利回り格差は182bpと、昨年6月以来の高水準となった。
アバディーン・アセット・マネジメントの投資マネジャー、パトリック・オドネル氏は、同盟と五つ星運動による新政権樹立を巡る不透明感から、安全資産とされる独債が買われ、イタリア債との利回り格差は拡大していると指摘。新政権が欧州委員会の見解から乖離した政策を実施し、イタリア国債の増発につながる可能性があるとの見通しを示した。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのノボトニー・オーストリア中銀総裁は、イタリアで樹立される新政権下での政策変更の可能性を巡り、不安が生じているとした上で、実行される政策を見極めるため待つ必要があると述べた。格付け会社フィッチは、新政権が提案する政策はイタリアの金融リスクを高めると警告した。
IHSマークイットによると、イタリアの債務保証コスト(CDS)は12bpし、7カ月ぶりの高水準となる136bpをつけた。
イタリア債の売りに追随し、ポルトガル10年債利回りも10bp上昇。1日としては1月以来の大幅な上昇となる。スペイン10年債利回りも約8bp上昇した。
独10年債利回りはほぼ変わらずの0.52%。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab