コラム:ソフトバンク、ヤフー子会社化で操る「目くらまし術」

コラム:ソフトバンク、ヤフー子会社化で操る「目くらまし術」
 5月8日、ソフトバンクグループは、ヤフー<9984.T>を巻き込んだ目くらましゲームに興じている。写真は都内で2017年7月撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)
Robyn Mak
[香港 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ソフトバンクグループ<9984.T>は、ヤフー<9984.T>を巻き込んだ目くらましゲームに興じている。
孫正義氏が率いるソフトバンクグループは8日、保有する40億ドル相当のヤフー株を傘下の通信大手ソフトバンク<9434.T>に付け替えることを明らかにした。これは戦略的な意味を持つとはいえ、双方の株主にとって金銭面でメリットがあるかどうか判然としない。
今回の取引の片方部分は、かなり分かりやすく見える。ソフトバンクはヤフーの新株を、7日終値の1株当たり302円で計15億株ほど引き受ける。それによりソフトバンクのヤフーに対する持ち分は12%から45%に上昇し、事実上経営権を握る。ヤフーとの関係がより緊密化することはソフトバンクにとってプラスになるのは間違いない。既に両社は電子商取引とモバイル決済の分野で提携している上に、2200万人のモバイル契約件数を抱えるソフトバンクとしては、ヤフーの9000万人のユーザーが加わるのは魅力的だ。
ところがソフトバンクグループが取引の反対側に関与している。同社はヤフーの18億株(36%)を1株当たり287円と7日終値より5%低い価格で、ヤフーに買い戻してもらう。ヤフー株の保有主体を実質的にソフトバンクグループからソフトバンクに変更するという何とも複雑な取引であり、金銭的に明白なうまみは乏しい。恐らく昨年12月のソフトバンク上場前であれば、ヤフー株の付け替えで金銭的な歪みを最小化することはできただろう。
ただこうした保有主体の変更は同じパターンをたどっている。昨年にはソフトバンクが2つの保有銘柄を、サウジアラビアなどと共同出資して設立したビジョン・ファンドに移管したと表明した。ゼネラル・モーターズ(GM)の自動運転技術開発子会社クルーズへの投資もビジョン・ファンドを通じて行ったと説明されたが、実際にはソフトバンクが株式を持っていることが分かった。
孫氏はしばしば、ソフトバンクグループ全体としての企業価値が大幅に過小評価されていると不満を口にしている。だがこれらの目くらましゲームによって、なぜ自身と市場の評価に差が生まれるかの説明がつく。
●背景となるニュース
・通信大手ソフトバンクは8日、4570億円(42億ドル)を投じてヤフーの新株を引き受けると発表した。持ち分は12%から45%に上昇する。
・ソフトバンクが引き受けるのはヤフーの15億株で、購入価格は1株当たり302円と7日終値と同水準。引き受け後にヤフーはソフトバンクの連結子会社となる。
・両社の関係がより緊密になることで、共同出資するQRコード決済アプリ運営のペイペイなどの成長テコ入れにつながる、と孫氏は語った。
・ソフトバンクグループは、保有するヤフーのおよそ18億株(36%)を1株287円でヤフーに買い戻してもらうと明らかにした。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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