コラム:スイッチは任天堂の「アイフォーン」
Quentin Webb
[香港 31日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 素晴らしいゲーム機ほど、任天堂<7974.T>をパワーアップするものは他にないだろう。31日発表された、極めて重要なホリデーシーズンを含む第3・四半期(2017年4─12月)決算は、家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の人気を如実に物語っている。
自宅でも外でもプレー可能なスイッチは昨年、価格約3万円で発売された。過去の事業不振時には、アプリや知的財産といった分野への進出を決断した任天堂だが、最も重要なのはやはりゲーム機である。
昨年10─12月期の売上高は、前年同期比3倍の約4830億円。営業利益も3.6倍の約1170億円に上る。任天堂は主力商品を、累計販売台数が1500万台に迫るスイッチにシフトさせている。その一方で、同社の携帯型ゲーム機「3DS」もいまだに売れ続けている。
スイッチの販売が据え置き型ゲーム機「Wii U」のそれをはるかに上回っていることを考えると、このことは任天堂にとって数年続く好調期の幕開けを意味する。ゲーム機は5年もしくはそれ以上、人気を持続することが可能であり、「スーパーマリオ オデッセイ」のような自社開発のゲームソフトで稼ぐことができる。
任天堂の株価は過去1年ですでに2倍になっており、30日の終値は1株当たり4万7000円を超え、同社の時価総額は6兆円を超えている。
この急上昇から、株価はさらに上に行く可能性がある。
モルガン・スタンレーのアナリストは先月、オンライン販売が好調なことから、任天堂の目標価格を5万9000円に引き上げた。スイッチの販売台数は年間3000万台に達すると推定している。そうなれば、ソニーのPS4や任天堂の初代Wiiのような過去のベストセラーの記録を塗り替えることになるだろう。
任天堂を巡っては、つい最近まで数々の懸念が渦巻いていた。どうすれば多くの携帯ゲームユーザーの心をつかむことができるのか、あるいは、スーパーマリオのようなキャラクターから収益を上げるというディズニー型アプローチを取ることができるのか、といったことだ。
同社は両事業に踏み出しており、米ナイアンティックと共同開発したスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」は大人気となった。
両事業とも重要な長期的プロジェクトだが、当面のメインイベントはゲーム機だ。
任天堂は、プレイステーションのほか、映画や音楽、携帯電話やテレビから半導体に至るまで提供するソニー<6758.T>とは違う。どちらかというと、スマホを主力とする米アップルに近い。
スイッチは任天堂にとっての「iPhone(アイフォーン)」であり、ゲームはまだ続く。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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