アングル:衛星写真が伝えるインドネシア大地震の爪あと

アングル:衛星写真が伝えるインドネシア大地震の爪あと
10月4日、インドネシア中部のスラウェシ島で9月28日発生した地震と津波による死者は、1400人を超えた。パル上空で1日撮影。提供写真(2018年 ロイター/Antara Foto/ Hafidz Mubarak A)
[4日 ロイター] - インドネシア中部のスラウェシ島で9月28日発生した地震と津波による死者は、1400人を超えた。そのほとんどが、高さ6メートルの津波に襲われた町パルに集中している。衛星データから、この町では建物3000軒のほか、道路や橋も破壊されたことが分かった。
<海沿いの地区>
津波が発生した夕暮れ時にはビーチでフェスティバルが行われており、数百人いた参加者の多くが死亡した。パル市街地に向かって湾が狭まる形をしているため、津波の威力が増したとみられる。
衛星写真などで、海沿いの建物や店舗が破壊され、橋が崩落したほか、海上に立てられたモスクも津波でさらわれたことが分かる。消失した建物もある。
津波の破壊力が写真により確認できる。津波をまともに受けた第4パル橋は、よじれた鉄骨と化して河口に横たわっている。
津波による、さらなる破壊の爪あとを湾の東側で確認できる。通り全体や、住宅街が区画ごと消えてしまった。舗装された散歩道や公園があった海沿いの1区画も消失した。
インドネシアの気象気候地球物理庁(BMKG)のデータは、津波による浸水被害があったことを示している。波の高さごとの浸水範囲を下図で示した。津波の高さは最大6メートルに達したとみられている。
<断層>
パルの町の近くには、パル湾を南北に走る「パル・コロ断層」がある。地質学者は、この断層では年4センチとインドネシアでも最大級のずれが発生しており、地震のリスクが高いとみていた。このような横ずれ断層の地震では、断層の両側の地層が水平方向に横ずれする。
英オックスフォード大のオースティン・エリオット氏は、断層沿いに大きなずれが生じたことが巨大な揺れの原因だと指摘。
「衛星写真で地表を観察すると、パルの市街地から海に至る断層面沿いに、最大7メートルのずれが発生したことが分かる。この詳細な衛星写真は、地震発生時のデータから予測したよりもさらに60─70キロ南方で断層が発生したことを示している。当初の考えより、さらに広範な地域の住民が、猛烈な揺れに見舞われたことが分かる」
下の図は、同じ地域を撮影した2枚の衛星写真を比較し、地点ごとの移動距離を計算して作成した。パル市街地から南方に伸びる断層をはさんで、地面が互い違いに動いたことがはっきり見て取れる。
下の衛星写真では、断層の右側の地面が動いたことが分かる。市街地の中に亀裂が生じた様子が確認できる
<液状化現象>
被害を拡大させたのが、広範囲で起きた液状化現象だった。
インドネシアの災害救助当局によると、パルのバラロア地区では、民家約1700戸が液状化現象により泥に飲み込まれた。
パルの空港の南にあるペトボ地区でも、広範な地域で液状化現象が起き、建物が被害にあったとみられることが衛星写真から分かる。
地震と津波の発生時、人口37万人超の町パルでは、自治体創設40周年を祝う祭りが開かれていた。

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