EU、対米通商交渉開始で合意 農産品は除外

EU加盟国、対米通商交渉の開始を承認
 4月15日、欧州連合(EU)加盟国は、米国と正式な通商交渉を開始することを最終承認した。通商交渉入りを巡っては、フランスの反発を受けて承認が数カ月遅れていた。写真は2018年7月に共同記者会見を行うトランプ米大統領(左)と欧州委員会のユンケル院長。ホワイトハウスで撮影(2019年 ロイター/Joshua Roberts)
[ブリュッセル 15日 ロイター] - 欧州連合(EU)加盟国は15日、米国と正式な通商交渉を開始することを最終承認した。欧州委員会のマルストローム委員(通商担当)は、対米通商交渉の着手準備が整ったとし、年内合意を目指す考えを示した。
加盟国は欧州委が提案した交渉権限を賛成多数で承認。フランスは反対票を投じ、ベルギーは棄権した。
EUは2分野での交渉開始を承認したが、農産品は除外した。米国は協議に農産品を含めることを求めており、反発が予想される。
加盟国の承認を受けて欧州委は、(1)工業製品の関税引き下げ、(2)製品がEUもしくは米国の基準を満たしていると企業が証明しやすくする方策、について交渉開始が可能になる。
マルストローム氏は記者会見で、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表との間で交渉開始時期を探る考えを示した。「こちらは用意ができており先方次第だ。開始について合意すれば、極めて迅速に進む可能性がある」と述べた。委員会の任期が切れる10月31日までに限定的な合意を目指す考えを示した。
ライトハイザー代表の報道官はコメントを控えた。
米上院財政委員会のグラスリー委員長は、農産品を除外した米欧通商協定が米議会の承認を得る可能性は低いとの見方を示した。「工業製品の関税と非関税障壁の撤廃では一部の要求しか満たされない。EUの農産品貿易で米国が大きな障害に直面する状況ではなおさらだ」と述べた。
マルストローム氏は「農産品は確実に交渉の対象外だ。欧州にとってレッドライン(越えられない一線)だ」と言明した。
以前行った環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)協定交渉に比べかなり野心が抑えられた内容になる可能性も強調した。
EUと米国の関係は、昨年7月にトランプ米大統領がEUの自動車への懲罰的関税の適用を先送りすることで合意し、緊張が緩和した。
ただ、ライトハイザー代表はEUとの間では農産品を巡り「完全に行き詰まっている」と不満を示しており、3月には議会の委員会で、農産品市場へのアクセスのない米欧通商協定はあり得ないと述べた。
EU加盟国は、米国がEUの鉄鋼・アルミに発動した関税を撤廃するまで交渉を妥結しないことや、米国が自動車などに新たな関税を発動した場合は協議を中止することでも合意した。
欧州委は農産物の関税や貿易障壁については議論しないと繰り返し表明しているが、自動車については議論する用意があるとしている。
外交筋によると、ドイツは自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)、ダイムラー、BMWの関税回避に向けて交渉を進めたい意向だという。ドイツは自動車と部品の対米輸出がEU全体の半分以上を占める。
一方、自動車の対米輸出が非常に少ないフランスは、トランプ氏との交渉は票につながらないとみて、5月の欧州議会選挙以降にこの問題を先送りしようとしていた。
フランスは、農産品を交渉の対象にすべきではないが、気候変動対策は盛り込むべきだと主張している。
*見出しと内容を更新しました。

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