アングル:為替と金利差の相関性、世界成長ブームで喪失か

アングル:為替と金利差の相関性、世界成長ブームで喪失か
 1月29日、金融市場では金利差と為替相場の相関性が10年以上も達したことのない水準に下がり、投資家は為替相場を読む際の金利差の重要性に疑いを持ちつつある。2017年5月、フランクフルトで撮影(2018年 ロイター/Kai Pfaffenbach)
[ロンドン 29日 ロイター] - 金融市場では金利差と為替相場の相関性が10年以上も達したことのない水準に下がり、投資家は為替相場を読む際の金利差の重要性に疑いを持ちつつある。
通常、金利差と為替相場は高い相関性を持つ。金利差が拡大すると、投資家はボラティリティが低水準を保つ限り、利回りの低い市場で借り入れた資金を利回りの高い市場に投資するのが普通だ。
しかしドルと他の主要通貨の相場、とりわけ対ユーロ相場と金利差の相関は昨年第3・四半期に崩れ、今年に入ってからはその傾向が一段と顕著になった。
90日移動平均で見た米国とドイツの2年物国債の利回り差とユーロ/ドル相場の相関が、2005年末以降の最低水準に接近していることを示すデータもある。
ゴールドマン・サックス(ロンドン)の外為戦略部門の共同責任者、カマクシャ・トリベディ氏によると、金利差と為替相場の相関性の消失自体はそれほど稀有なことではなく、特に2010─14年に両者の相関性が非常に高かった後だけに強い違和感はないという。
トリベディ氏は「債券の資金動向以外の要因が為替相場の動きを左右することもある。こうした要因にはヘッジのない株式投資や外貨準備の分散化、世界的な高成長などがあり、いずれも今われわれが目にしているものだ」と話した。
実際に世界経済はこの数年で成長ペースが最も力強い。ブラックロックのストラテジストは、トランプ政権が導入した減税による景気刺激を考えると、米経済はさらに数年間拡大基調が続くと予想している。
世界的に成長が回復したにもかかわらず、借り入れコストが低いおかげで極端な金融緩和状態が続き、株式市場は活況だ。
しかも米経済は、米連邦準備理事会(FRB)が昨年3回の利上げを実施し、今年もさらに3回程度の追加利上げが予想されているにもかかわらず、成長を続けた。
しかしドルは昨年初めから15%下げており、投資家は米資産に投資するほどにはまだ金利差が開いていないとみているようだ。
モルガン・スタンレーは、世界的な調達通貨であるドルが低迷し、今後さらに下がる可能性があるということは金融市場にとってプラスで、こうしたドルの動きが投資家のリスク志向を支える続けるとの見方を示した。
ドル安が続いたため、世界の中央銀行や政府系ファンド(SWF)は徐々に外貨準備を分散化してドルの保有比率を下げ始めた。中銀はこのところドル離れを加速しており、2015年に66%と過去最高だったドルの保有比率は昨年9月に63%程度に下がった。
米国の金利はユーロ圏を150ベーシスポイント(bp)程度上回っているが、成長見通しはユーロ圏の方が明るく、欧州株式市場への資金流入はこうした市場の見方を反映している。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの1月のファンドマネジャー調査によると、ユーロ圏株式への資金配分は差し引き45%のオーバーウエートで、長期平均を大きく上回った。
バンク・オブ・ニューヨーク・メロンの首席通貨ストラテジストのサイモン・デリック氏は、金利差と為替相場の相関性の消失は長期の金利を見ると鮮明だと指摘。両者の相関性が崩れたことは中銀の金融政策見通しの重大な変化の前兆かもしれないとして、投資家に警戒を呼び掛けている。
(Saikat Chatterjee記者、Tommy Wilkes記者)

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