タリバン、アフガン首都の大統領府掌握 ガニ大統領は出国

[カブール 15日 ロイター] - アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは15日、首都カブールに進攻し、大統領府を掌握した。駐留米軍の撤退完了を前に猛攻をかけてきたタリバンの復権が現実味を帯びる中、欧米諸国はカブールから外交官など自国民を退避させる動きを加速した。
ガニ大統領は流血を避けたいとして15日出国した。タリバンのナイーム広報官は同日、カタールが拠点のアルジャジーラテレビに対し、アフガニスタンにおける戦争は終了したと宣言し、統治と政権の形態はまもなく明らかになるとの見通しを示した。
米国内では、アフガンの混乱は米国のリーダーシップの欠如がもたらしたとして、バイデン大統領によるアフガン撤退方針を批判する声が出ている。共和党のマコネル上院院内総務は「テロリストと中国のような主要競合相手は、身を潜めた超大国の醜態を見ている」と強調した。
カブールの空港には15日夜、国外への脱出を図る多数のアフガン人の長い列ができた。
現地テレビ局1TVは15日夜、日中はほぼ静かだった市内で複数の爆発音が聞こえたと報じた。また、外交官や政府関係者、その他のアフガン市民らが出国のため向かった空港の付近では銃声が聞こえたという。
支援団体エマージェンシーによると、負傷者80人がカブールの病院に搬送されたが、病院の受け入れ体制は限界に達しているという。
ガニ大統領がどこへ向かったのか、政権が具体的にどのように移譲されるのかは現時点で不明。タリバンの広報官はアルジャジーラテレビに対し、国際社会から孤立することは望んでおらず、すでにある外交ルートを発展させ、平和的な外交関係を築きたい築きたいと語った。
アルジャジーラは先に、タリバンだとする司令官が数十人の兵士とともにカブールの大統領府にいる映像を流した。
タリバンは米軍が撤退する中、ここ数週間に進攻を強め、主要都市をほぼ制圧。首都近郊のほとんどの地区も掌握したとしている。
 8月15日、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは、首都カブールに侵攻し、大統領府を掌握した。タリバン幹部が明らかにした。写真はカブール上空を飛ぶCH-46シーナイト(2021年 ロイター)
ガニ大統領はフェイスブックに投稿し、カブール市民を危険にさらす流血やタリバンとの衝突を避けるために出国したと説明した。居場所は明らかにしなかった。
米国は大使館の外交官をヘリコプターで空港まで退避させた。米国などが訓練などを提供してきたアフガン政府軍は事実上瓦解した。
<イスラム法の厳格適用に懸念>
アフガン人の多くは、1996─2001年のタリバン政権時代のシャリーア(イスラム法)を厳格に適用した恐怖政治が再び敷かれることを恐れている。タリバンは一方、女性の権利を尊重し、外国人とアフガン人の両方を守ると約束するなど、これまでより穏健な姿勢を強調している。
米政府当局者によると、米国防総省はアフガンにいる米国人と米政府に協力したアフガン人の安全な退避を支援するため、兵士1000人の追加派遣を決めた。
同省の高官はワシントンでロイターに、米国人を中心に約500人がこれまで国外に脱出しており、予定されている米軍兵士がカブールに配置されれば、1日5000人の退避が可能になると述べた。
フランス、ドイツ、オランダなど欧州の諸国も自国民や自国機関で働いたアフガン人の国外退去に取り組んでいると表明した。
ロシアは在アフガン大使館の職員を退避する必要性は生じていないとし、トルコは在アフガン大使館の業務を継続するとした。
国連のグテレス事務総長はタリバンやそのほかの当事国に対し、最大の自制を求め、アフガンの女性や女児の将来に特に懸念を表明した。

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