アングル:米投票機メーカー、中間選挙控え右派の陰謀論と格闘

アングル:米投票機メーカー、中間選挙控え右派の陰謀論と格闘
 11月6日、投票集計システムを手掛けるメーカー各社は、2020年の米大統領選で票が盗まれたとするトランプ氏の虚偽の主張で右派勢力から製品の信頼性が疑わしいと攻撃を浴びており、事業そのものを守るために全国各地で苦闘している。写真は10月24日、テキサス州エルパソの投票所で期日前投票を行う有権者(2022年 ロイター/Paul Ratje)
[6日 ロイター] - 投票集計システムを手掛けるメーカー各社は、2020年の米大統領選で票が盗まれたとするトランプ氏の虚偽の主張で右派勢力から製品の信頼性が疑わしいと攻撃を浴びており、事業そのものを守るために全国各地で苦闘している。
業界大手のドミニオン・ボーティング・システムズとエレクション・システムズ・アンド・ソフトウエア(ES&S)は、州政府など地方自治体との契約が脅威にさらされており、これを跳ね返そうと政治面や広報面で「地上戦」を繰り広げている。ドミニオンは法廷闘争にも乗り出し、トランプ氏の支持者や米FOXニュースなどのメディアを相手取って8件の訴訟を起こしている。
多くの郡や州が投票システムについて長期契約で縛られていることもあり、メーカーはこれまでのところ大きな損失を被っていない。しかし、投票不正を巡る虚偽の主張は右派の主流に受け入れられつつあり、メーカー各社は、20年の選挙結果を受け入れない「選挙結果否定論」の動きを真剣に受け止めている。ロイターの世論調査によると、共和党員の約3分の2が20年の大統領選でトランプ氏から票が盗まれたと考えている。
確実な技術の集計機の利用促進を訴える非営利団体ベリファイド・ボーティングの政策・戦略ディレクター、マーク・リンデマン氏は、「製品が疑惑と不信の津波に襲われた企業は存続が危うくなる」と話す。
ドミニオンは、20年の大統領選でトランプ氏からバイデン氏に票が流れたとする右派の主張で大きく取り上げられているため、最も激しい反対に遭っている。ロイターが政府の記録や地元関係者に取材したところ、ドミニオンは8つの州の少なくとも12カ所の選挙区で投票システムの交換を求める当局者や活動家による運動に直面している。
中でも20年にトランプ氏が圧勝したルイジアナ州では、ドミニオンが州全体で結んでいる投票システム契約がリスクにさらされている。同州の当局は親トランプ派や投票機反対活動家からの圧力を受けて、約1億ドル相当の新規契約の締結を無期限で先送りしている。
8日の中間選挙ではネバダ、アリゾナ、ペンシルベニア、サウスダコタ、ミネソタの各州で、投票機を巡る抗議に直面している5つの郡が、ドミニオン製またはES&S製の装置による集計結果を人手によりチェックする予定。このうちネバダ州ナイ郡は、著名な選挙結果否定論者のキャンペーンを受けて選挙管理委員会が全員一致でドミニオン製タッチスクリーン投票機の廃棄を勧告した。
投票機メーカーに対する攻撃は中間選挙の結果次第で全国規模でさらに盛り上がる可能性がある。電子投票システムの使用中止を支持する選挙結果否定論者はアリゾナ、ミシガン、ネバダ、ペンシルベニアなどの激戦州で知事や投票管理責任者である州務長官の選挙を巡って反投票機の働き掛けを展開している。
ドミニオンは20年の大統領選以降の業績についてコメントを避けた。ES&Sも業績の詳細を明らかにしなかったが、反投票機の運動で顧客を失うことはなかったとした。
右派活動家の緩やかなネットワークは米国の選挙制度全般を批判しており、その中心を成すのが投票機への攻撃だ。全米で選挙管理当局者には何百件もの脅迫や、投票機に関わる陰謀を暴いたとするメッセージが届いている。先にロイターは不正の証拠を求める親トランプ派や活動家が20年の大統領選以降少なくとも18件のセキュリティ侵害を行い、投票装置に不正にアクセスするか、アクセスしようとしたと疑いがあると報じた。
選挙管理当局者や投票システムベンダーなどへの20回余りのインタビューによると、大量の誤情報と闘うにはコストがかかり、投票機メーカーは訴訟と広報への投資を拡大せざるを得ない。
ドミニオンは正式な声明や訴訟を通じて投票機陰謀論に強く反論してきた。ただ、契約を巡る地元の政治的な争いにあまり関与せず、投票機反対論者に直接対処している地元当局に情報や専門知識を提供することを優先している。
ES&Sの幹部は、ケンタッキー、ワイオミング、アイダホなどの州に月に何度も足を運んで機械のデモに出席し、同社の機械が実際にはインターネットに接続されていないこと、同社には外国人オーナーがいないことなどを説明している。
(Helen Coster記者)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab