アングル:イタリアの2銀行清算、巨額国庫負担に厳しい批判

アングル:イタリアの2銀行清算、巨額国庫負担に厳しい批判
 6月26日、イタリア政府がベネト・バンカなどの2銀行の清算手続きを開始したことに対し、欧州連合(EU)関係者からは、今後の金融危機再発に備えたユーロ圏の信用維持のための努力を損なう行為だと痛烈に批判する声が上がった。写真はベネト・バンカのロゴ。2016年1月撮影(2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)
[フランクフルト 26日 ロイター] - イタリア政府がベネト・バンカなどの2銀行の清算手続きを開始したことに対し、欧州連合(EU)関係者からは26日、今後の金融危機再発に備えたユーロ圏の信用維持のための努力を損なう行為だと痛烈に批判する声が上がった。
今回のイタリア政府の対応では、破綻した2行の優良資産を引き受けるイタリア銀行大手インテーザ・サンパオロに対し、政府が50億ユーロ余りを支払うほか、インテーザを損失から守るため最大120億ユーロを保証する。清算に掛かる費用の大半を投資家ではなく国庫が負担することになっており、批判の矛先は、投資家が損失を負担すべきだとしたEU各国指導者の合意原則を破ったイタリア政府や、それを許した欧州委員会に向かっている。
政府ではなく投資家が損失を担うべきだとするEUの法律制定に携わった、欧州議会のフィリッペ・ランバーツ議員は「徒労だった。欧州にとってはひどい日だ。またしても欧州の統合を損なう動きだ」と述べ、通貨ユーロや、欧州の大手銀行を監督する欧州中央銀行(ECB)の信認が大きく損なわれると指摘した。
やはり法制定に携わったスベン・ギーゴルド議員は、今回のルールを無視したやり方に関し議会での喚問実施を要求。計画の最終承認権を持つ欧州委を問題にしている。
破綻時の損失負担を巡る新たなルールづくりを主導したドイツ政府の反応も当然冷ややかだ。同国財務省の報道官は「銀行破綻において公的資金の使用はできる限り避けるべきだ」と強調した上で、ルールを尊重する仕組みを確保するのは欧州委の責任だと付け加えた。
今回の決定を受け、投資家は安堵し、株価は上昇。イタリアにとっては頭痛の種が一つ減ったことになり、イタリア中銀の当局者の1人に至っては、今回の対応がゆくゆくは政府に利益をもたらすことになると語った。
ただ、欧州議会関係者に漂う雰囲気は重苦しい。ドイツの欧州議員、マーカス・ファーバー氏は「(イタリアの対応は)銀行同盟を葬ろうとしている」と批判。銀行同盟の次の取り組みとされる、ユーロ圏内での預金保険制度の一元化を例に挙げ「さらに統合を進めても意味がない。イタリアに預金保険を利用させようなどと考える者は誰もいない」とはき捨てた。
イタリアの対応は、公的資金により救済するのではなく損失は投資家が負担するという、EUとして打ち出した枠組みを活用していくことが可能なのか、大きな疑問符を突きつけた。さらに、銀行業界を監視し、最近まで両行には支払い能力があるとみなしてきたECBに対する疑念を生じさせる結果ともなっている。
スペインのサンタンデール銀行が今月、資金繰りに行き詰ったバンコ・ポピュラールを1ユーロで買収したケースで、一般投資家を含むポピュラールの株主や個人債権者が損失負担を強いられたのは、イタリアの対応と実に対照的だ。
サンタンデールによる救済を受けてポピュラールの投資家には訴訟を提起する動きがある。そうした投資家の代理人の弁護士は、今回のイタリアの対応について、損失を被った投資家による提訴を一段と後押しすることになると予想。「インテーザは、サンタンデールができなかったやり方で利益を上げようとしている」と語り、不公平な扱いだと指摘した。
(John O'Donnell記者)

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