アングル:中国の水質汚染、世界の水処理企業が熱視線

[常州(中国) 9日 ロイター] - 悪名高いある場所で、世界中の水処理企業が好機をうかがっている。廃棄物が急増し、水質汚染が深刻化する中国だ。
世界で最も人口の多い中国では長い間、肥料の流出や重金属、未処理の汚水による汚染と闘ってきた。2015年の調査によると、同国では地下水の3分の2近く、そして地上水の3分の1が、人間が接触するのに適していない。
改善策として、中国は2020年までに12万6000キロに及ぶ下水管を新たに建設すると発表。これは優に地球3周分の長さだ。同国政府はさらに、都市部の下水処理能力を1日当たり5000万立法メートル増やすとしている。これは五輪プール2万個分に等しい。
このような中国政府の方針は、イスラエルのエメフシーや米化粧品大手エスティ・ローダーのロン・ローダー氏が設立したRWLウオーター、仏ヴェオリアといったような水処理関連企業に大きな門戸を開いている。各社とも、向こう5年間、推定3兆元(約50兆円)の年間環境予算が見込まれる中国市場におけるシェア獲得を狙っている。
「農業や地方から出る廃水問題は現在、とても深刻だが、廃水処理事業は依然として弱い」。国会に相当する全国人民代表大会で立法権を行使する常務委員会で副委員長を務めるTong Weidong氏はそう語る。
最近では、長江流域の湖北省にある世界最大の水力発電ダム、三峡ダムの貯水池に村民が汚水を捨てているとの報道があった。
だが、変化はすでに始まっている、とTong氏は語る。
新たな法律の下で、水質管理の直接の責任を負うことになる地元当局は今後、下水処理能力の改善を迫られる。都市部は2020年までに、2015年の92%から95%まで処理能力を向上させなくてはならない。一方、中部から西部の農村地域は50%に達する必要がある。
「市場は巨大だ」と、イスラエルの水処理企業エメフシーの中国法人で最高経営責任者を務めるWong-Jin Yong氏は語る。同社は北京と周辺各省における潜在的な市場機会について、10億ドル(約1141億円)を超えるとみている。
中国全土で水道事業を手掛けているヴェオリアのような外国企業はこれまでも存在したが、最近では浄水に重点を置いた大規模事業が勢いを増している。
2016年に発表された中国の5カ年計画では、汚染対策が強調されている。その前年に発表されたアクションプランの中で、政府は2030年までに全国的に水質を改善すべく巨額の資金を投じるとしている。
一方、地方当局は自身の計画を実施するための資金繰りに苦労しており、そのことが民間企業に一段と機会を与えている。
<押し寄せる企業>
エメフシーは年末までに中国で小型の汚水処理装置8台を稼働させる計画で、現在同国で工場を建設中だという。同社はすでに、江蘇省の常州にある学校で小型トラックほどの大きさの移動式装置を設置しているほか、同州無錫の下水処理場でも別の装置を稼働させている。
エメフシーによれば、同社の小型装置は1日当たり2万リットルの汚水を処理することが可能で、設置に2カ月を要するという。また、エネルギーコストが非常に低く、地方の市場には理想的だとしている。
ベンチャー企業のRWLウオーターは、中国の地方における汚水処理事業において「進出を加速」させるべく、7月にエメフシーと合弁企業を設立する。
両社は中国国有の北控水務集団や中国水務投資のほか、北京桑徳環境工程<0967.HK>や康達国際環保<6136.HK>といった地元企業としのぎを削ることになる。
環境基準の強化はあらゆる規模の企業を呼び込んでいるが、主要プロジェクトを支配しているのは依然として国有の大企業だと、繊維産業に水処理技術を売っている江蘇緑尚環保科技のゼネラルマネジャー、Xue Xiaohu氏は指摘する。
中国は、銀行融資に対するインセンティブを増やしたり、汚染対策資金の確保を目的とした「グリーンファイナンス」を奨励したりすることにより、環境に優しいプロジェクトを支援すると約束している。
外国企業にとって、規制をうまく切り抜けるハードルは地元企業と比べて一段と高く、通常は地元企業とパートナーを組む必要がある。
「地方政府への対応にはさまざまな課題がある。そのため、われわれもパートナーを組んだ」と、エメフシー中国法人CEOのYong氏。同社は浙江紅波按鈕制造を含む複数の中国企業とパートナー関係を結んでいるという。
「テクノロジーはわが社の中核であり、それに重点を置くことになるだろう」と同CEOは語った。
(David Stanway記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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