コラム:中国が国債格下げを軽視できない理由
Lisa Jucca
[香港 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国は国債の格下げで気を引き締めざるをえなくなる。ムーディーズが24日、1989年以降で初めて格付けを引き下げことで、中国の格付けは台湾より低くなった。中国国債の外国人保有比率は極めて低く、国内企業の格付けも個別の論理に基づいて設定されるため、今回の格下げは多分に象徴的な意味しか持たない。しかし中国が海外資金を取り込もうとする試みは、出鼻をくじかれるのではないだろうか。
ムーディーズは中国の格付けを1段階下げて「A1」とした。これで先行して格下げしていたフィッチ・レーティングスとは同じ水準となり、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)も今後追随するかもしれない。ムーディーズは格下げの根拠として、中国の財政健全性が次第に低下していくとみられることを挙げた。それはつまり、昨年末で国内総生産(GDP)の277%にまで膨らんだ非金融部門の債務(訂正)を政府が抑え込めないという事実の端的な表現だ。
ただ中国では、格下げが投資行動に幅広く影響を及ぼすという世界各地で見られる事態は決して起きない。一番の理由は、主要新興国では20─30%が一般的な国債の外国人保有比率が、中国の場合は3%未満であることだ。国内投資家の大半は、新発債を買ったら満期まで持ち続け、国際的な信用力の評価に一喜一憂しない。
ムーディーズの試算では、中国の国債利払い費用の歳入に対する割合は約6%と、より財政が不安定な諸国でこの割合が20%に上っているのと比べればずっと低い。だから債務返済能力もかなりしっかりしている。
それでも将来的に痛みをもたらす恐れがある要素が1つある。中国政府は、本土と香港の債券市場接続計画などを通じて海外の資金を取り込もうとしている。年内に同計画が始動するのを前に、格下げは投資家心理を冷やすだろう。
中国が資本勘定の対外開放を続けていく中で、外国格付け会社からの政策批判を無視できる時間は残り少なくなっているように見える。
*277%に膨らんだのは企業借り入れのみでなく非金融部門の債務であることを明確にしました(2段落目)。
●背景となるニュース
*ムーディーズは24日、中国の格付けを1989年以降で初めて引き下げた。長期の自国通貨建てと外貨建て債務の格付けは「Aa3」から「A1」に1段階下がり、格付け見通しは安定的になった。これはS&Pやフィッチでは「ダブルAマイナス」から「シングルAプラス」への低下に相当する。
*フィッチは既に中国の格付けを「シングルAプラス」としている。S&Pは「ダブルAマイナス」だが、格付け見通しは「ネガティブ」。
*ムーディーズは声明で、中国の財政健全性が今後数年にわたって低下していくと予想した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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