コラム:中国の「一帯一路」構想、国内の反発招く恐れ

コラム:中国の「一帯一路」構想、国内の反発招く恐れ
 5月16日、「一帯一路」の名の下で中国が世界的に推進するソフト・パワーの大攻勢は、同国が15世紀に経験したような、国内からの反発を招く可能性がある。写真は北京で11日撮影(2017年 ロイター)
Pete Sweeney
[ワシントン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 「一帯一路」の名の下で中国が世界的に推進するソフト・パワーの大攻勢は、同国が15世紀に経験したような、国内からの反発を招く可能性がある。
当時、中国明代の武将・鄭和(ていわ)は、宝船の艦隊を率いて、遠く東アフリカにまで及ぶ大航海を行ったが、大失敗に終わった。巨額の費用に悩んだ官僚たちが、艦隊を解体し、さらに航海を禁止したのだ。
それから6世紀を経た現在、習近平国家主席は、約1兆ドル(約112兆円)をかけて、アジアと欧州、アフリカとを繋ぐインフラと貿易の経済圏を作り出す野心的な計画を打ち出した。15日閉幕した北京での国際会議で、習主席は、新たに1240億ドルの拠出を約束した。
習主席が掲げる「新シルクロード」構想の明文化された目標は、地域の通商活性化だ。これは、貿易推進ではなく、行く先々で地元民に高価な贈り物をして中国文明の優位性を印象づけることが狙いだった15世紀の大航海と比べれば、上等な出発点だ。
だが今回も、政府高官たちは、国外からの参加者が「新シルクロード」構想にいかに強い感銘を受けたかを記録するのに必死だった印象がある。同構想について、「調和のなか共存する大家族」などという、曖昧だが救世主的な表現で説明することにも熱心だった。
だが市井の人々には、あまり恩恵がない。インフラ投資のほとんどが国有企業を通じて行われる見通しで、国民の大半を雇用する民間セクターが得る恩恵は限定的だ。
融資のほとんども、国有銀行が実行する。650億ドルに上る中国のベネズエラ向け債権のように、問題を抱えた政権に対する不良債権リスクを、中国の納税者も負うことになる。中国がすでに巨額の企業債務負担を抱えていることを踏まえると、このことは不安の種となる。
中国は現在も途上国であり、7000万人の国民を2020年までに貧困ラインから脱出させる目標を掲げている。医療制度や教育制度の問題を改善し、空気と水の清浄化を進めるには、さらに多くの財源が必要になる。
もし、国営メディアがあらゆる問題の解決策として宣伝した今回のプロジェクトが、中国の一般国民に実感できる恩恵を与えることができなければ、習主席は航海に出たことを後悔するかもしれない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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