焦点:仏大統領選、市場は極左候補より「ルペンリスク」警戒

仏大統領選、市場は極左候補より「ルペンリスク」警戒
 4月21日、フランス大統領選は23日の第1回投票を控え、極左で増税路線のメランション氏が世論調査で追い上げを見せているが、投資家らが今もより大きなリスクとみなしているのは極右候補のルペン氏だ。写真は選挙遊説をするルペン氏。フランスのマルセイユで19日撮影(2017年 ロイター/Robert Pratta)
[ロンドン 21日 ロイター] - フランス大統領選は23日の第1回投票を控え、極左で増税路線のメランション氏が世論調査で追い上げを見せているが、投資家らが今もより大きなリスクとみなしているのは極右候補のルペン氏だ。
メランション氏は最上位層の所得税率を90%に引き上げることを掲げ、欧州連合(EU)離脱にも前向きな考えを示しており、平時なら支持が集まりにくい候補。
先月には15%以下に低迷していた同氏の支持率だが、最新の調査では20%とルペン氏に迫っており、5月7日の決選投票に向け、4候補の接戦となっている。
これを受けて市場のボラティリティは高まり、1週間物のユーロ/ドルの予想変動率(インプライドボラティリティ)は今週、1999年のユーロ導入以来最大の上昇となる見込み。
右派のフィヨン氏や中道系のマクロン氏と比べると、メランション氏は孤立主義者だ。EU内の立場を巡る再交渉が不首尾に終われば、離脱の是非を問う国民投票実施を公約としているほか、北大西洋条約機構(NATO)や国際通貨基金(IMF)からの脱退、国際的な自由通商協定の拒否などを訴える。
こうした主張は、欧州単一市場や単一通貨が揺るぎないものと信頼する投資家にとっては高リスクだが、それでもルペン氏ほどリスクは大きくない。極右政党・国民戦線(FN)を率いる同氏は、EUだけではなくユーロからも離脱する「フレグジット=Frexit」を選挙戦で訴えている。
ルペン氏はEUとの協議の余地を残しているが、ユーロや移動の自由、予算上の取り決め、広範囲のEU法を6カ月以内に廃止し、EUをより緩やかな共同体にするという他の加盟国が受け入れがたい条件を掲げている。
こうした要求から、市場はルペン氏がEUに対し、メランション氏より激しいイデオロギー上の敵対心を抱いているとみている。
ベレンバーグの欧州エコノミスト、フロリアン・ヘンセ氏は「EUやユーロ圏離脱はメランション氏にとって『プランB』だが、ルペン氏には事実上『プランA』だ」とし、同氏のリスクが依然最も高いと懸念を示した。
<ボルケーノリスク>
ヘンセ氏は、ルペン氏やメランション氏が大統領に選ばれる確率はわずか10%と予想。たとえ選ばれたとしても、議会の多数を確保して公約を推進していくのは難しい。決選投票で対決する場合、中道系独立候補のマクロン氏や保守系のフィヨン氏はルペン氏に圧勝するとみられている。
モルガン・スタンレーのアナリストらは、メランション氏が当選する見込みはなお低く、ルペン氏の確率が約15%であるのに対し、メランション氏は約5%としている。
これに対しシティのストラテジストらは、第1回投票がかなりの接戦で予想がつかず、決選投票でルペン氏とメランション氏が相対する「悪夢」のシナリオが浮上し、市場に「ボルケーノ(火山)」リスクが広がっていると考えている。
同社は、決選投票でルペン氏かメランション氏が勝利した場合、フランスをはじめ欧州株は6月末までに最大10%下落する恐れがあると予想。一方、マクロン氏かフィヨン氏の勝利なら、年末までに最大20%上昇する可能性もあるという。
ソシエテ・ジェネラルの通貨ストラテジストは、決選投票が非主流派2人の対決になるというリスクは「やや小さくなっている」と指摘。その理由として、世論調査でのメランション氏の支持率が20%を超えなかったこと挙げた。
ただ、ノムラのアナリストによると、ルペン氏かメランション氏が決選投票に進む可能性は約40%で、昨年の米大統領選や英国民投票前にトランプ氏勝利やEU離脱決定が予想された確率より高くなっているという。
同社は「中核メンバーが離脱すれば、ユーロ圏崩壊の可能性は高まる。そうなれば、世界の金融市場に予期しない大きな影響を及ぼすことになる。ルペン氏が当選した場合、ブレグジット決定後のような上昇相場が起きる可能性はかなり低いだろう」との見方を示している。

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