東芝の半導体事業売却手続きは「合弁契約に違反」、WDが抗議書簡

東芝の半導体事業の分社化・売却は契約違反=合弁の米WD
 4月12日、米ウエスタン・デジタルは、売却を前提とする東芝の半導体事業分社化は同社と東芝の合弁契約に反するものだと、東芝に送った書簡で警告した。写真は都内で2月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 12日 ロイター] - 東芝<6502.T>が売却を検討している半導体メモリー事業の分社化について、同事業の合弁生産パートナーである米ウエスタンデジタル(WD)が「合弁契約の重大な違反」であるとする抗議の書簡を東芝側に送付したことが12日、明らかになった。
東芝は財務立て直しに向け、NAND型フラッシュメモリー事業の売却を急いでおり、関係筋によると、米ブロードコムAVGO.Oと米投資ファンド、シルバーレイクの連合、東芝と合弁を組むWD、韓国のSKハイニックス000660.KS、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業2317.TWの4陣営が1次入札を通過した。東芝は同事業を分社化して東芝メモリ株式会社を設立、今年4月1日に自社の持ち分を移転している。
ロイターが確認したWDのスティーブン・D・ミリガンCEO名の抗議文書は、東芝による事業持ち分の移転が「合弁契約の極めて重大な違反であり、(WDの)契約上要求される同意権を無視」していると批判。東芝メモリの株式をWDの同意なく第三者に譲渡できると東芝が考えているとすれば、「(その)解釈はまったく根拠がない」だけでなく、「(WDの)権利を蹂躙する」行為であると厳しく指摘している。
また、東芝が行っている出資入札について、「噂されている2─3兆円の入札額は、公正で支持可能な価格を大きく超えている」とし、「いずれの入札者も日本および合弁事業にとっては非常に問題」との見解を示している。特に、入札企業の一つとみられているブロードコムについては、「非常に大きな懸念を有している」と名指しで言及している。
WDは、東芝に対して「(WDを)優先度の低い入札者であるかのように扱うのはやめ、実質的で独占的な交渉を開始するよう」要請。さらに、WDが他の入札者よりも東芝のNAND型フラッシュ事業の性格を理解している、などの点を強調している。
WDはハードディスク駆動装置(HDD)世界最大手。三重県四日市市でフラッシュメモリーを東芝と共同生産してきた米半導体メーカーのサンディスクを昨年5月に買収。東芝との提携関係を引き継いでいる。
書簡の中でWDは、日本で過去17年間に130億ドルを超す投資をしてきた実績に触れるとともに、日本における長期にわたる技術革新に注力し、東芝の資産を守る強い意志を表明。東芝との長期にわたる提携をふまえ、東芝の目標を達成する取引を提案・実行するうえで最適な立場にあると強調している。
一方、関係筋によると、東芝はメモリー事業の子会社化と売却に関して、手続きなどに問題はない、とする意見書を弁護士から取得しているという。東芝はWDの書簡についてのロイターの取材に対して「個別の契約内容には答えられない」(広報)と回答した。
*内容を追加して再送します。

山崎牧子、布施太郎

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