コラム:マクロン氏、当選後に訪れる「真の試練」

コラム:マクロン氏、当選後に訪れる「真の試練」
 4月23日に実施された仏大統領選の第1回投票の結果、親EUで改革派のエマニュエル・マクロン候補(写真)と、保護主義を訴える極右勢力のマリーヌ・ルペン候補が5月7日の決選投票に進むことが確実となった。写真は23日パリ市で撮影 (2017年 ロイター/Philippe Wojazer)
Swaha Pattanaik
[ロンドン 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 23日に実施された仏大統領選の第1回投票の結果、親EUで改革派のエマニュエル・マクロン候補と、保護主義を訴える極右勢力のマリーヌ・ルペン候補が5月7日の決選投票に進むことが確実となり、フランス国民が直面する選択肢が明確になった。
中道系独立候補のマクロン氏は決選投票での本命とみられており、反EU候補の台頭を懸念していた投資家を安堵させた。だがマクロン氏の勝利確率の方が、公約した変革を実現する可能性より高い。
マクロン氏はすでに、極めて大きな実績をあげた。わずか1年前に自らの市民運動「前進」を立ち上げたばかりの39歳は、60年におよぶ右派と左派の2陣営による政権独占に終止符を打った。第1回投票で敗れた両陣営の候補者は、すぐさまマクロン氏支持を表明した。
とはいえ、マクロン氏は、ルペン氏や、選挙戦後半で支持を伸ばした急進左派のジャンリュック・メランション候補に比べ、より従来型の安定的な路線を主張している。アジア市場が開くと、ユーロが対ドルで2%上昇した理由はそこにある。
だがロスチャイルド系投資銀行出身のマクロン氏にとって、大統領の座を勝ち取ることは、彼の挑戦において比較的簡単な部分だったという結果になるかもしれない。フランスの有権者は、マクロン氏の取り組み以上に急進的な改革を主張する候補者に投票する傾向があるようにみられる。オランド社会党連立政権の経済相としてマクロン氏が進めた政策は、組合の反対やデモを受けて骨抜きとなった。与党内からも抵抗を受けたほどたっだ。
マクロン氏の市民運動には、6月のフランス議会選挙で勝利するのに必要な組織力が欠けている。さらなる政治的地殻変動が起きない限り、同氏は、公務員削減や企業との労働時間折衝などの主要政策課題の実現のため、右派か左派どちらかの主要政党を頼ることになるだろう。
与党・社会党の改革派は、マクロン氏の政策を支持する可能性がある。野党・中道右派連合も、こうした政策を受け入れるかもしれない。だが、政党的につながりのない大統領のために、一部有権者の不興を買う改革を後押しする意欲は、両党ともに低い。マクロン氏がもし2週間後の決選投票で大統領の座をつかめば、真の試練に挑むことになる。
*写真を差し替えて再送します。
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